2009 Fiscal Year Annual Research Report
カタユウレイボヤにおける自家不和合性の分子メカニズム
Project/Area Number |
09J07023
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
齋藤 貴子 Nagoya University, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 自家不和合性 / 受精 / カタユウレイボヤ / Themis / カルシウムチャネル / 卵黄膜 |
Research Abstract |
雌雄同体である海産無脊椎動物カタユウレイボヤは、自家受精を防ぐ機構「自家不和合性」を獲得している。本研究では、その原因分子の有力候補であるv-Themis-A/B及びs-Themis-A/Bの多型解析や局在性、さらにタンパク質間相互作用の解析を通して、自家不和合性の分子メカニズムの解明を目的としている。 まずは、カタユウレイボヤ約100個体のゲノムDNAを抽出し、各個体におけるThemisハプロタイプの探索を行った。さらに、今後の解析に用いるため、4種の特定のハプロタイプを持ったホヤを交配し、その系統維持を行っている。卵側のv-Themis-Aに関しては、卵巣卵から成熟卵まで各ステージの卵からmRNAを抽出しRT-PCRを行った結果、v-Themis mRNAが卵巣及び成熟途中の卵で発現していることが示された。さらに、ハプロタイプごとのv-Themis-A抗体を作製し、対応するホヤの卵の免疫染色を行った結果、自他認識を行う場である卵黄膜に局在していることが示された。精子側のs-Themisに関しても抗体を作製し、免疫染色を行った結果、精子頭部の先端及び鞭毛の付け根、鞭毛全体に存在していることが明らかとなった。また、s-Themis抗体は他家受精を有意に阻害するという結果も得られ、s-Themisが受精に関与することが強く示唆された。s-Themis-B内のPKDイオンチャネルは、カルシウムチャネルとして精子細胞内へのカルシウム流入を調節していると考えられるため、イオノマイシンを用いて人為的に細胞内カルシウム濃度を上昇させたところ、s-Themisの局在が変化することが示された。同様の局在変化は、自己卵に結合した精子においても観察された。今後は、これらの結果をもとに、自他認識シグナルがカルシウム動態やs-Themisの挙動に及ぼす影響について詳細に解析することが課題である。
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