2009 Fiscal Year Annual Research Report
相対論Dirac法で探る物理化学現象-PT対称性の破れ・同位体効果・希土類発光
Project/Area Number |
09J07180
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
阿部 穣里 Tokyo Metropolitan University, 理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 相対論的分子理論 / 同位体化学 / 重元素化学 / 量子化学 / Dirac方程式 |
Research Abstract |
私は本研究課題で、相対論的な量子化学の応用研究として、3つのテーマ、PT対称性の破れ・同位体効果・希土類発光を掲げている。PT対称性破れを観測する手法として、分子の電気双極子モーメントの低温精密測定がある。この観測の候補となる分子にYbLiがあげられているが、まず実験としては、光会合によるYbLi基底状態の分子合成を行わなくてはならない。そこで、YbLiの光会合実験の情報提供のために電子状態計算(基底・励起状態に関するポテンシャル曲線の記述、遷移双極子モーメント)を行い、現在Journal of Chemical Physics誌に投稿中である。同位体効果については、日本地球化学会をはじめ、さまざまな関連分野の学会で、核の同位体効果が理論的に取り扱えることを発表した。同位体分別における配位子効果の研究を行い、現在Journal of Chemical Physics誌に投稿中である。また同位体効果に関する2008年の前論文に対して、データに間違いがあったため、その修正報を出した。さらに、京都大学原子炉の藤井俊行准教授を主著者として、亜鉛やニッケルなどの元素の核の体積効果について研究を行っている。私はその中で、主に理論計算を担当している。亜鉛の同位体効果についてはJournal of Physical Chemistry A誌に2本の論文が掲載された。パラジウムや鉛については現在論文を投稿中である。ニッケルについては、地球化学的に重要な元素であり、地球化学の雑誌に投稿するため、現在論文準備中である。希土類発光については、先に開発されている電子状態理論として、足立らのDV-Xα法や、SeijoらのAIMP法があげられる。そこで、本年はDV-Xα研究会の年会に参加し、自分の行ってきた相対論的な多参照電子相関理論について招待講演者として発表し、DV-Xα法の開発者らと意見を交換した。また国際学会ICQC2009に参加した際には、Seijo、Barandiaranらと直接議論して、希土類発光の電子状態計算に対して、どのような研究が実験的に期待されているのか、私の方法論の妥当性、実現可能性について議論を行った。
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