2011 Fiscal Year Annual Research Report
相対論Dirac法で探る物理化学現象―PT対称性の破れ・同位体効果・希土類発光
Project/Area Number |
09J07180
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
阿部 穣里 首都大学東京, 理工学研究科, 助教
|
Keywords | 相対論的分子理論 / 重元素化学 / 低温分子 / 素粒子物理 / 同位体化学 |
Research Abstract |
本研究では、4成分相対論的量子化学の手法を用いて、3つの物理化学的現象の解明を行うことを主題としていた。1,2年めに関しては主に同位体の核の体積効果について発展させたので、最終年度である当該年度においては、PT対称性破れの証拠となる、電子電気双極子モーメント(EDM)探査のための相対論的電子状態理論の開発に力を注いだ。分子を用いた電子EDMの実験的な探査は、申請当初に比べても、この1,2年で大きく注目を浴びており、日本においても3件の研究グループ(東大・東北大、京大、富山大)が測定を計画している。こうした実験の円滑な遂行のためには、相対論的な電子状態理論からしか得ることのできない、分子の有効電場の値を計算する必要がある。分子においてこれまでは近似が多く含まれた有効電場の計算値しか報告されていなかったが、本研究ではDirac-Coulomb演算子を用いて、Hartree-Fock法における有効電場の計算を行った。YbF,BaF,HgF,PbF,YbSr^+,YbBa^+,YbRb, YbCsの分子について過去計算との比較を行い、理論やプログラムの妥当性について議論を行った。フッ化物はアルカリアルカリ土類類で形成される分子よりも大きな有効電場を生じた。同じフッ化物で比較すると、重たい原子を含むほど有効電場が増加することが確認できた。本研究内容を、The 5th Asian Pacific Conference of The oretical&Computational Chemistry(APCTCC)においてポスター発表を行ったところ、優秀ポスター賞を受賞した。また分子を用いた電子EDM測定の実験グループでのワークショップなどでも多く依頼を受けて発表しており、具体的に実験研究者との議論を進めることで、実験研究者の研究促進に貢献した。
|