2010 Fiscal Year Annual Research Report
C型肝炎ウイルス(HCV)構造蛋白質の成熟化、品質管理及び粒子産生機構の解析
Project/Area Number |
09J07235
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安東 友美 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | HCV / ウイルス / ウイルス粒子形成 / 可視化 |
Research Abstract |
C型肝炎ウイルス(HCV)粒子形成および成熟化機構の解明を目的として、以下の実験を行った。 FRET技術を利用して細胞内のATP濃度を可視化するプローブ(ATeam)を用いて、HCV複製時の複製複合体におけるATPレベルを検証した。この可視化技術により、複製を維持した状態でHCV粒子産生・分泌経路を観察可能になると期待できる。本年度は、HCV複製細胞におけるATPの挙動を、細胞質と複製複合体それぞれについて定量的に解析した。HCV複製複合体におけるATPレベルをモニターするために、HCV NS5A蛋白質にATeamを融合した発現系を構築した。共焦点顕微鏡で観察したところ、複製複合体の存在を示唆する顆粒状の発現部位で、強いFRETシグナルが検出された。抗ウイルス抗体を用いた免疫染色を行ったところ、この顆粒部位においてウイルス蛋白質が共局在していた。FRETレベルとATP濃度の相関からATP濃度を解析したところ、細胞質のATP濃度はおよそ2mMから1mMに低下しており、一方、顆粒状の部位では5~10mMと非常に亢進していた。以上から、HCV複製複合体においてATPレベルが亢進している可能性が示唆された。同時に細胞質におけるATP濃度が半分程度に低下していることから、HCV複製によるエネルギー消費の亢進により、宿主細胞内のエネルギー系が撹乱されていることが示された。ATPは宿主細胞における様々な反応に関与しており、細胞質におけるATPレベルの低下は宿主生理活性の広範囲に影響を及ぼすと考えられる。ウイルス感染による、ATPのような小分子の局在や濃度変化はこれまで報告がなく、ウイルス感染が宿主細胞に与える影響について、新たな知見が得られたと考える。今後、HCV感染生細胞において、HCV粒子産生・分泌経路を観察可能な系として発展させていくことを試みる。
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