2009 Fiscal Year Annual Research Report
B細胞初期分化におけるBach転写ネットワークの解明
Project/Area Number |
09J07369
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊藤 亜里 Tohoku University, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | B細胞初期分化 / リンパ球前駆細胞 / 転写因子 / LMPP / CLP |
Research Abstract |
B細胞とT細胞は、Hematopoietic Stem cell(HSC)より、Multipotent progenitor(MPP)、Limphoid primed multipotent progenitor(LMPP)、Common lymphoid progenitor(CLP)の前駆細胞を経て分化する。転写抑制因子Bach1とBach2の二重欠損マウス(DDマウス)では骨髄のB細胞数が最も未熟な分化段階であるpro-B細胞から減少していた。したがって、Bach因子はリンパ球分化を制御している可能性がある。この可能性を検証するため、本年度はDDマウスの骨髄B細胞数減少の原因を以下の4つの項目について検討した。第一に、細胞増殖能が低下している可能性を検証した。DDマウスにBrdUを腹腔投与し、B細胞への取り込みをフローサイトメーターで解析したが、野生型のB細胞と同等であった。第二に、抗体遺伝子の組み換えの異常が原因である可能性を検証した。VDJ組み換えの頻度をPCR法で測定したが、DDと野生型マウスのB細胞で差を認めなかった。第3に、B細胞に必須の遺伝子発現の異常が原因である可能性を検証した。骨髄のDDB細胞と、野生型B細胞で、DNAマイクロアレイおよび、定量PCRを実施した結果、E2A、EBF、Pax5などのB細胞の初期分化に重要な遺伝子の発現は同等であった。これらのことから、DDマウスのpro-B細胞からの分化は正常に行われている可能性が高いと考えられた。第四に、リンパ球系前駆細胞が減少していることが原因である可能性を検証した。DDマウスの骨髄のLMPP数を測定したところ、野生型の半数以下に減少している事を発見した。また、CLPの数も同様に半数以下に減少していた。これらの異常は単独欠損マウスでは見られなかった。さらに、DDマウスのLMPPの減少がT細胞へ与える影響ついて検討を行い、予備的な実験で、胸腺中に存在するEarly T cell progenitorの数が野生型の半数以下に減少していることも確認した。よってDDマウスで見られるpro-Bからの細胞数減少は前駆細胞であるLMPPの減少が原因である可能性が高い。Bach因子が互いに機昨日を補う形で、LMPPの分化を促進している可能性が考えられ、リンパ球分化に重要な因子である可能性が示唆された。
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