2009 Fiscal Year Annual Research Report
銀河ハローのX線による観測的研究と次世代X線分光素子のための信号処理系の開発
Project/Area Number |
09J07560
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
萩原 利士成 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | X線天文学 / 高温星間物質 / 天の川銀河系 / 複合解析 |
Research Abstract |
銀河ハローは銀河の進化と密接に関連していると考えられているが、その温度、密度といった物理パラメータは依然謎に包まれている。X線天文衛星すざくはハローからの放射輝線を用いた詳細な分光観測が可能でありハローの2次元的な物理状態分布を決定することを可能とする。また、背景天体を用いた吸収線観測と放射輝線観測を組み合わせた複合解析により、視線方向(+1次元)の物理状態分布を決定出来る。 私は、この解析手法の先駆者であるコロラド大学のYao氏の元で、PKS2155-304方向に対して複合解析を行い、この方向の銀河ハローがkpcスケールで広がっているということを初めて示した。この結果と、Yao氏との共同研究による1つ目の複合解析結果を比較することにより、我々の銀河の周りを温度200万度程度、密度0.001個/ccの高温ガスが数kpcスケールで取り囲んでいる、という新たな描像が浮かび上がった。エネルギー収支を用いた計算結果は、これらの高温ガスのエネルギー源が銀河系内の超新星爆発、及び大質量星の星風であることを示唆しており、今後の銀河ハローの研究を通じて銀河のエネルギー、物質循環史の解明が進展すると期待される。また、銀河中心方向に対しても複合解析を行い、銀河中心方向、lkpc程度の領域におよそ400万度の高温ガスが局在している可能性を明らかにした。この結果は、銀河の内外に存在する高温ガスの起源が2つある可能性を示唆しており、高温ガスの研究を通じて、解明の進んでいない銀河中心領域の進化史にも進展が期待される。これらをまとめて論文とした。
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