2011 Fiscal Year Annual Research Report
環境調和を目指すポリフッ化水素塩イオン液体中での電解フッ素化反応
Project/Area Number |
09J07704
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
澤村 享広 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 電解フッ素化 / 無機フッ化物塩 / ポリエチレングリコール / グリーンケミストリー / 電解合成 / フッ素化反応 / 陽極酸化反応 / リサイクル |
Research Abstract |
本研究では、環境低負荷の有機フッ素化合物の合成法の確立を目的として、無機フッ化物塩(MF)を用いた電解フッ素化反応の開発を試みた。その背景として現在、工業的に用いられているフッ素化剤には毒性や爆発性、腐食性など安全性に問題がある。そこで様々なフッ素化剤が開発されてきたが、未だに安全性やコストに問題が解決されていない。一方、フッ化カリウムに代表されるMFは入手が容易で安価、取り扱いやすいフッ化物イオン源として利用されているが、有機溶媒への溶解性の難点から、その利用は制限されていた。 そこで本研究ではクラウンエーテルと同様の効果を期待し、系中に安価なポリエチレングリコール(PEG)を加えることでMFを溶解させ、さらに電解反応を適用することで安価かつ穏和な反応条件でフッ素化反応が行えると考えた。実際に、アセトニトリル中におけるMFの溶解度を測定したところ、PEGの添加でMFの溶解度が500~700倍に向上し、サイクリックボルタンメトリー測定においてもPEGを加えたことで初めて酸化還元電流を観測できた。そこで様々な基質に関して電解フッ素化を試みたところ、トリフェニルメタン類、ジチオアセタール類、トリフェニルポスフィンなどの基質に関して40℃という穏和な条件で効率的にフッ素化反応が進行することを見出した。この本電解系はリサイクル特性にも優れており、電解液の再利用にも成功している。さらに本電解系は、電解フッ素化に限らず、安価な無機塩NaBF_4を支持電解質とした一般的な陽極酸化反応にも適用可能であることも見出した。具体的には、ジチオアセタール類の脱保護反応、チオンエステルの脱硫反応、陽極カップリング反応に対しても効果的であった。 本電解系は、安価なMFをフッ素源とし、穏和な条件でフッ素化反応を進行させた世界で初めての例である。このため、本フッ素化法の工業化が大いに期待される。
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Research Products
(4 results)