2010 Fiscal Year Annual Research Report
炭化ケイ素ダイオードによる室温動作可能な陽子線・ベータ線検出器の開発
Project/Area Number |
09J07821
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
岩本 直也 電気通信大学, 大学院・電気通信学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 炭化ケイ素 / ダイオード / 粒子検出器 / 電荷収集量 / 電荷収集メカニズム / 結晶欠陥 |
Research Abstract |
室温動作可能な高エネルギー粒子検出器としての応用が期待できる炭化ケイ素(SiC)ダイオードについて、粒子検出時の電荷収集メカニズムを解明するための研究を行った。SiCダイオードに印加するバイアス電圧とアルファ線に対する電荷収集量の関係を調べたところ、低バイアス領域において、一般的な電荷収集モデルでは説明できない過剰な電荷収集が発生することが明らかになった。この過剰な電荷収集のメカニズムを解明するために、半導体デバイスシミュレータを用いた解析を行った。解析の結果、アルファ線によって生成された高密度の電荷がダイオード内部を移動する際、定常状態の電荷の均衡を崩し、電界分布が過渡的に変化することで過剰な電荷収集を誘発することが明らかになった。この過剰な電荷収集は半導体中のキャリアの移動度に大きく依存すると考えられる。パラメータを変えたシミュレーションによって、シリコン(Si)等に比べて移動度の小さいSiCでは、過剰な電荷収集の効果が顕著になることも確認した。これらに加えて、SiC中の結晶欠陥が粒子検出特性へ与える影響について研究を行った。SiCダイオード中に存在する結晶欠陥は、電荷収集量を低下させるものと考えられる。電荷収集現象をより詳しく調べるために、電荷収集量の時間変化測定システムを構築し、電子線照射により大量の結晶欠陥を導入したSiCダイオードの電荷収集量の時間変化を180Kから310Kの温度範囲で測定した。測定結果について時定数を用いた解析を行ったところ、バンドギャップ中に2つの欠陥準位が存在することが示唆された。
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