2011 Fiscal Year Annual Research Report
炭化ケイ素ダイオードによる室温動作可能な陽子線・ベータ線検出器の開発
Project/Area Number |
09J07821
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
岩本 直也 電気通信大学, 大学院・電気通信学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 炭化ケイ素 / ダイオード / 高エネルギー粒子検出器 / 電荷収集特性 / 結晶欠陥 |
Research Abstract |
炭化ケイ素(SiC)ダイオードの粒子検出特性(電荷収集特性)と結晶欠陥の関係を明らかにすることを目的として研究を行った。この研究は、放射線耐性に関するものであり、SiCダイオードを高エネルギー粒子検出器として実用化するために必要不可欠である。 はじめに、ダイオードの電荷収集特性に影響を及ぼす欠陥を検出するための新たな手法としてAlpha Particle Induced Charge Transient Spectroscopyを開発した。本手法は、ダイオードに高エネルギー粒子が入射した際の電荷収集過程を詳しく解析することで欠陥を検出するものであり、従来の欠陥評価手法に比べ、電荷収集特性と欠陥を直接関連付けることができるという点で優れている。次に、高エネルギーの電子線照射により意図的に欠陥を導入したSiCダイオードについて、本手法を用いた欠陥評価を行った。その結果、電子線照射によって形成される欠陥のうち、Eiと呼ばれる欠陥のみが電荷収集特性を劣化させる原因であることが分かった。また、欠陥Eiは、SiC結晶中から炭素原子をはじき出すのに必要なエネルギー以上の電子線を照射した場合に検出されることから、SiC結晶中の炭素原子に関係した欠陥であると考えられる。さらに、欠陥Eiは、比較的低温である200℃程度の熱アニールによって消滅し、電荷収集特性は電子線照射前まで回復することが分かった。 これまで高エネルギーの電子線照射などによってSiCダイオード中に欠陥が形成されることで、その電荷収集特性が劣化することは知られていたが、電荷収集特性を劣化させる原因となる具体的な欠陥は特定されていなかった。この点について、本研究によって初めて明らかになった。
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