2009 Fiscal Year Annual Research Report
非平衡状態下で相関電子系の示す新奇物性の理論的研究
Project/Area Number |
09J08238
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森本 高裕 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1
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Keywords | 量子ホール効果 / グラフェン / THz光 / ファラデイ回転 |
Research Abstract |
量子ホール効果は、1980年代から二度にわたりノーベル賞を受賞した物性物理の中心的テーマの一つであり、最近では抵抗の標準となるほど日常的にも重要であるが、量子ホール効果を示す半導体に強いレーザー光を当てると、「光学的量子ホール効果」と呼ぶべき新現象が発生することを理論的に予言した。この効果は、近年発展が著しいテラヘルツ光領域におけるレーザー光学技術により観測可能であることが見積もられる。また、ポスト・シリコン材料として現在脚光を浴びているグラフェンにおいても、「偏光(ファラデー回転)で見る微細構造定数」という新奇な光学的量子ホール効果を予言した。 静的な性質である量子ホール効果は微分幾何的な理解が可能であるが、このようなトポロジカルな性質は光でゆさぶると壊れそうに思えるのに、意外なことに、階段状のホール伝導度が光学ホール伝導度に現れることが分かった。これは波動関数のアンダーソン局在の効果によると考えられる。段の高さは量子化からはずれるものの、光で見る量子ホール効果は磁気伝導効果の分野に新たな方向性を与える。実験的には、ファラデー回転の大きさが磁場もしくは系の電子密度を変えると、階段状に飛び移っていく効果として観測されることが予想される。 光は、最近の物性物理のキーワードの一つであるが、本研究は、今後発展の期待される量子ホール系の光学応答の分野に、確かにおもしろい現象が待ち構えているということを示した。今後のレーザー光技術の発展、グラフェン物性の深化により、本研究の実験的検証および関連した新現象が探索されることが期待される。
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Research Products
(8 results)