2009 Fiscal Year Annual Research Report
経営者の実体的裁量行動の要因とその経済的帰結に関する実証分析
Project/Area Number |
09J08269
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山口 朋泰 Tohoku University, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 利益マネジメント / 実体的裁量行動 / 規模仮説 / 負債比率仮説 / 利益ベンチマーク / 経営者交代 / 株式所有構造 / 会計上のフレキシビリティ |
Research Abstract |
本研究は、企業経営者による利益マネジメントの中でも、ビジネス活動を通じて利益を調整する実体的裁量行動に焦点を当てている。当該年度においては、一時的な値引販売による売上操作、裁量的費用の削減、原価低減を図る過剰生産という3タイプの利益増加型の実体的裁量行動を対象に、(1)当該行動が将来業績に与える影響と(2)当該行動の決定要因を分析した。(1)の検証結果は、実体的裁量行動が将来業績に負の影響を与えることを示唆した。特に、会計発生高を増やす余地が小さく、利益ベンチマークを辛うじて達成した企業の実体的裁量行動ほど、将来業績への悪影響が大きいことを示唆した。本研究の意義は経営者の実体的裁量行動が企業の将来業績に影響する可能性を示したことにあり、会計制度の設計においては実体的裁量行動の悪影響を含意すべきという結果を提示した点で重要性が高い。(1)の研究成果は「機会主義的な実体的裁量行動が将来業績に与える影響」『会計プログレス』No.10(2009)に所収され、財団法人経和会記念財団より優秀論文賞を受賞した。次に、(2)の検証結果は,規模が大きい企業、経営者持株比率が高い企業、及び金融機関持株比率が高い企業ほど実体的裁量行動を控え,負債比率が高い企業、辛うじて黒字を確保した企業、経営者交代前年度の企業、及び会計上のフレキシビリティが低い企業ほど実体的裁量行動を行うことを示唆した。本研究の意義はこれまでほとんど明らかにされていない実体的裁量行動の要因を包括的に解明したことにあり、実体的裁量行動を抑制できる可能性があることを示した点に重要性がある。なお、(2)の研究成果は第37回現代会計政策研究会で報告し、改訂を通じてディスカッション・ペーパー「実体的裁量行動の要因に関する実証分析」『TM & ARG Discussion Papers』NO.97(2010)で公表した。
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Research Products
(2 results)