2009 Fiscal Year Annual Research Report
放射光解析に基づく終端構造制御酸化物ヘテロ接合の界面エンジニアリング
Project/Area Number |
09J08463
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉松 公平 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | PLD法 / 酸化物ヘテロ界面 / 光電子分光 |
Research Abstract |
トンネル磁気抵抗(TMR)効果素子として期待されているペロブスカイト酸化物La0.6Sr0.4MnO3(LSMO)は、その界面において特性が劣化する"dead layer"の存在が報告されている。TMR素子として実用化するためには、LSMO界面の劣化層の起源を明らかにし、抑制することが非常に重要である。本研究では、LSMOにおける最適な界面構造の作製を目的として、Laser MBE&in situ光電子分光装置を用いて界面の組成と幾何学的構造の制御を行うことが目的である。本年度は、界面の幾何学的構造に着目し、Ruddlesden-Popper(RP)構造の作製を行った。RP構造は2原子層のAO層を堆積することにより作製できる。RP構造を持つ界面では、酸素イオンを介したBサイト間の結合を切断することで、Bサイト間の電荷移動を無くすことが可能である。このRP構造をrock salt構造を持つLaSrOターゲットを用いて、RHEED振動を用いることで作製することに成功した。次年度はこのRP構造の上にLSMOを膜厚を変えて堆積し、界面の電子状態の観測を行う予定である。また、膜厚変化に伴う根本的な電子状態の変化を明らかにするため、典型的な3d1電子状態を持つペロブスカイト酸化物であるSrVO3(SVO)の膜厚変化に伴う電子状態変化を放射光光電子分光による観測を行った。その結果、バルクでは金属であるSVOが膜厚を減少させると擬ギャップが形成し、さらに薄くするとモット絶縁体となることを明らかにした。この現象を動的平均場近似を用いた理論計算と比較を行うことで、このSVOの金属絶縁体転移が、膜厚変化により次元性が3次元から2次元的に変化し、それに伴ってバンド幅が減少することにより起こっていることを明らかにした。この結果は近年盛んに研究が行われている酸化物薄膜の膜厚依存性に関する普遍的な解釈を与えるものであると考えられる。
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Research Products
(5 results)