2009 Fiscal Year Annual Research Report
炭素クラスターの精密化学修飾を利用した生体機能分子の動態観察
Project/Area Number |
09J08591
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 優希 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 炭素クラスター / クロスカップリング反応 / フッ化アリール |
Research Abstract |
私は平成21年度の研究において,炭素クラスターの化学修飾とその構造の分析を基盤とした,TEMによる生体機能分子の動態観察に関する研究を目指すべく,マーカーとして働くフラーレン誘導体の簡便な合成法の開発を試みた.しかしながら,ケテンシリルアセタールを用いたフラーレンへの五重付加反応は,得られる生成物がアリール基を有するフラーレン誘導体と比べて不安定であることから,更なる官能基化が困難であることがわかった.TEMを用いた生体機能分子の動態観察において,精密な分子設計および合成は必要不可欠であるため,私は当研究室で以前から報告されているカップリング反応を検討し,フラーレン誘導体の効率的な合成へと展開することとした. フッ化アリール等のフッ素を含む化合物は,がん細胞に対する生理活性を示す特異な性質から,近年,注目を集めている.しかしながら,フッ化アリールの簡便な合成法の報告例は数少ない.当研究室では以前,ヒドロキシホスフィン型二座配位子がニッケル触媒によるフッ化アリールの熊田カップリングを著しく加速することを見いだし,ニッケルとマグネシウムの協働作用が炭素-フッ素結合活性化の駆動力であることを提唱している.しかしながら,本触媒系では基質と反応剤の適用範囲に多くの制約があった. これらの問題を解決すべく検討を行った結果,フッ化アリールのクロスカップリングに有効な新触媒系を見いだすことに成功した.すなわち,フッ化アリールと,有機亜鉛反応剤のニッケル触媒クロスカップリング反応において,新規POP型三座配位子がニッケルの活性を効率的にコントロールすることで,顕著な反応促進効果を示すことを発見した.本触媒系を用いることで,フッ化アリールのクロスカップリング反応の適用範囲を大幅に拡大すると同時に選択的なモノアリール化反応によるフッ化アリールの簡便な合成法を開発することに成功した.
|