2009 Fiscal Year Annual Research Report
鉄触媒による非極性結合活性化を鍵とする新規分子変換反応の開発
Project/Area Number |
09J08684
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松本 有正 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 鉄触媒 / 炭素-水素結合活性化 / 炭素-炭素結合形成 / ビアリール合成 / 有機金属化学 |
Research Abstract |
本研究は、研究代表者が開発した鉄触媒とアリール亜鉛反応剤によるアリールピリジン類緑体の直接アリール化反応を基とし,鉄触媒によるより一般的な炭素-水素結合の活性化を経る反応を開発する事を目的としている.当該年度では(1)反応の適用範囲の拡大,及び(2)反応条件の改善を主に研究を行った.(1)に関して,これまで反応に用いる事ができる基質はアリールピリジン類縁体に限られていたが,本研究によって新たにアリールイミンを用いた場合にも反応が進行する事を見出した.イミンは対応するケトンから容易に合成する事ができ,また反応後,様々な官能基に変換可能である.この結果は,本反応の適用範囲を飛躍的に広げる物であり,医薬品,及び有機機能材料などの合成へ応用が期待される.(2)に関して,本反応はこれまで量論量のジクロロアルカンを酸化剤として用いる必要があったが,本研究で酸素を反応系中に徐々に導入する事により,酸素のみを酸化剤として反応が進行する事を見出した.これにより多量の有機ハロゲン化物を酸化剤として用いる必要がなくなり,工業レベルでの応用が容易になったといえる.またこれらの検討を通して,本反応が通常,遷移金属触媒と有機金属試薬存在下でクロスカップリング反応が進行することが知られている芳香族塩化物,臭化物,およびスルホン酸エステルを有する基質を用いた場合にも,これら官能基を損なう事なく選択的に炭素-水素結合のアリール化が進行することを見出している.これは合成上の応用だけでなく,科学的にも興味深い結果である. 以上,当該年度の研究によって,これまで希少な第二,第三遷移金属触媒の利用が中心であった炭素-水素結合活性化に対し,代替金属としての鉄の有用を示した.これは学術的のみならず環境負荷の少ない反応の開発という点で社会的にも意義深い物である.
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