2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J08714
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高吉 慎太郎 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 量子相転移 / ヘリウム / 原子気体 / 低次元系 / 磁性 |
Research Abstract |
グラファイト基板上吸着ヘリウム系において新しい量子状態の探究を行った。基板にスピン1/2をもつヘリウム3を吸着させた系の連続波NMRスペクトルの解析から、基板の性質を明らかにした。同じ系でヘリウム3の吸着量を増加させたときにおこる流体-整合相転移や整合-非整合相転移などの研究を行い、整合-非整合相転移が2相共存を経た1次転移であることを示した。さらにヘリウム3の4/7相はスピン1/2の反強磁性三角格子であり、フラストレーション系を実現している。ヘリウム3の密度を増加させたときのスピン交換相互作用の大きさの変化について調べた。我々はこのようにグラファイト上吸着2次元ヘリウム系に多くの新奇な量子臨界現象が現れることを明らかにした。私は本年度よりヘリウムにとらわれず、理論的な側面から幅広く相転移現象に関する研究を進めることにした。系として光学格子中にトラップされた冷劫原子気体を選んだ。この系の長所はフェッシュバッハ共嗚を用いて原子間の相互作用を自由に操作でき、理論と直接比較が可能な点である。我々は内部自由度によって引き起こされる物理を解明したいという動機で、その最も単純な場合である1次元中2成分系(内部自由度が2)の理論的研究を行い、2成分間の斥力相互作用を強くしていくと成分の取り替えに対応するZ_2対称性が破れて成分間に密度差が生じることを厳密対角化およびiTEBD(infinite time-evolving block decimation)と呼ばれる数値計算手法を用いて示した。またこの系の基底状態相図を幅広いパラメータ領域で決定するとともに、成分間のホッピング項の有無によって密度差相への相転移の性質が大きく異なることも分かった。さらにエンタングルメントエントロピーのスケーリングから共形場理論のセントラルチャージを求めることにより、密度差が生じた相でスピン電荷分離が生じており、スピンセクタにはギャップが開いているが電荷セクタはギャップレスの朝永ラッティンジャー液体になっていることを示した。
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Research Products
(8 results)