2009 Fiscal Year Annual Research Report
自己形成量子ドットのスピン軌道相互作用によるスピンコヒーレンスとスピン操作の研究
Project/Area Number |
09J08921
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 駿 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 自己形成量子ドット / スピン軌道相互作用 / スピンコヒーレンス / 近藤効果 / スピン操作 / 電子スピン共鳴 / 電子輸送現象 |
Research Abstract |
当該年度では、自己形成InAs量子ドットにおける近藤効果とスピン軌道相互作用(SOI)の関係を調べることにより、スピンコヒーレンスの基礎物理を探究することを目的とした。そのために、近藤効果の観測に有利な試料作製を行い、その電気的特性を希釈冷凍機温度で調べることを計画した。 本年度前半ではこの計画に基づいて研究を行ったが、これまでと異なる作製過程を組み入れたことで試料作製に時間を要し、その間に、所属研究室において他研究者が、別の目的で作製した試料に対して同様の測定をしたところ、上記のスピンコヒーレンスに関する結果が得られた。そこで、試料作製を中断し、その研究に参加した。結果として、高磁場において、異なる軌道と異なるスピンをもつ2状態の縮退点に注目したところ、近藤効果による電流値のゼロバイアスピークがSOIによって2つに分裂したピークを観測した。また、ドットに隣接するサイドゲートによって、SOIの大きさを変化させて、その分裂の大きさを調節し、近藤温度との比較をすることにも成功した。 本年度後半では、次年度以降の課題である、スピン操作の研究準備に取りかかった。まず、測定の要となる高周波電圧の導入を準備した。所属研究室には既に大掛かりで高価な装置はそろっているため、本研究に必要な試料ホルダーや高速スイッチなどの準備を行った。また、試料構造に関しては、当初計画していた埋め込み電子チャネル構造を作製するのには時間を要するため、まずは、ドットに隣接するサイドゲートを追加したのみの試料を作製した。このサイドゲートに高周波電圧を印可することによって、ドット内でスピン軌道相互作用に起因する電子スピン共鳴を起こし、それをドット電流で観測することを次年度以降の目的としている。 また、1年を通して、当該年度以前に得られた、SOIの磁場角度依存性に関する結果の解析や学外の研究者との議論を行い、論文を投稿した。これは、自己形成InAs量子ドットにおいて、量子ドット固有の選択則に基づき、ラシュバ項のSOIだけに注目し、その面内磁場角度φに対する依存性を調べたところ、SOIエネルギーが|cosφ|の依存性を示したという結果である。
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Research Products
(3 results)