2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J09073
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
細野 暢彦 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 高分子材料 / ポリマーブラシ / 分子配向 / 光応答性材料 / 刺激応答性材料 / アゾベンゼン / エネルギー変換 / テフロン |
Research Abstract |
本研究の目的は、主鎖のまわりに側鎖を高密度に有する分岐型高分子である「ポリマーブラシ」をモチーフとして、これまでにない動作原理に基づく刺激応答性高分子材料を開発することである。ポリマーブラシは単一分子レベルから集積構造までマルチスケールの構造デザインが可能であるという特徴を持っている。平成21年度は光応答性ユニットであるアゾベンゼンを側鎖に多数導入した種々のポリマーブラシの合成に挑戦し、得られたポリマーブラシの自己集合構造や光応答性について調査・検討した。 1.光応答性ポリマーブラシの合成 アゾベンゼンユニットを直列に連結した直鎖状モノマーを設計し、数種合成を試みたが溶解性の問題から高分子量のポリマーを得ることができなかった。しかし、モノマーの末端に分岐鎖を設けることにより溶解性の問題を克服し、目標化合物であるアゾベンゼンを直列に3個連結させた側鎖を持つ光応答性ポリマーブラシの合成に成功した。 2.光応答性ポリマーブラシの自己集合構造の解析 合成したポリマーブラシについて示差走査熱量測定により熱物性を調査したところ、得られたポリマーブラシは中間相(100℃~120℃)を示すことを見いだした。この中間相温度領域における放射光小角X線散乱測定から、本ポリマーブラシは中間相温度領域において自己組織化的に集合し、二次元格子構造を形成することを明らかにした。 3.光応答性ポリマーブラシからなるフィルムの光応答 キャスト法を用いて本ポリマーブラシからなる自立フィルムを得ることに成功したが、そのフィルムは光照射に対する応答をみせなかった。それとは対照的に、偶然にもホットプレス法により加工した同フィルムが、顕著な光応答を示すことを見いだした。小角X線散乱測定から、ホットプレスして得たフィルム内においてポリマーブラシが大面積で垂直配向していることを明らかにした。詳細な検討により、このポリマーブラシの自発的配向現象は、ホットプレス時に基板として使用した延伸テフロンシートがポリマーブラシの二次元格子配列に影響を与えた結果であると結論づけた。 このポリマーブラシをモチーフとした分子設計とテフロンシートを用いたホットプレスによるフィルム作製手法は、極めて簡便に高分子を大面積で垂直配列させることができるため、これまでの材料製造プロセスへの応用だけでなく、次世代の機能材料開発に革新をもたらすものと期待される。
|