2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J09138
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
富永 依里子 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 電子・電気材料 / 結晶成長 / 量子井戸 / 半導体・半金属混晶 / ホトルミネセンス |
Research Abstract |
半導体半金属混晶GaAsBiの禁制帯幅は、小さい温度依存性を有することが実証されている。本研究では、この特性を活用して発振波長が温度に依存しない光通信用半導体レーザを得ることを最終目的としている。 BiはGaAsと混ざりにくいため、GaAsBiは準安定な状態下でなければ成長させることができず、350℃での低温成長が必要である。このため、昨年度光励起によるGaAsBi/GaAs薄膜におけるレーザ発振を初めて実現したが、今後のGaAsBiを用いたレーザダイオード構造の製作にあたり、その製作プロセス内の熱処理でGaAsBiを含むヘテロ接合界面の急峻性が失われる懸念があった。 当該年度は、分子線エピタキシー法を用いて成長したGaAsBi/GaAs多重量子井戸(MQW)を500~700℃の範囲で熱処理し、高分解能X線回折装置と二次イオン質量分析計を用いて、熱処理前および熱処理後のGaAsBi/GaAsヘテロ接合界面の急峻性の変化を調べた。GaAsBi/GaAs界面は650℃まで熱的に安定であり、原子層レベルで急峻な界面を保持していることが明らかになった。700℃において急峻性は劣化するものの、界面のだれは数原子層程度にとどまることが明らかになった。 次に、将来的にレーザの活性層を量子井戸とすることを考慮し、成長したGaAsBi/GaAs MQWのホトルミネセンス(PL)特性を評価した。MQWのBi含有率が増大するに従い、180~300Kの範囲で測定したPLピークエネルギーの温度係数は低減し、Bi含有率5.4%のMQWのPLピークエネルギーの温度係数は-0.19meV/Kであった。これは、GaAsの禁制帯幅の温度係数の約40%である。GaAsBi/GaAs MQWのPLピークエネルギーが小さい温度依存性を有することを実証した。 当該年度の成果は、GaAs_<1-x>Bi_xを活性層に用いた半導体レーザダイオード構造の製作への足がかりとなるものである。
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