2009 Fiscal Year Annual Research Report
質量分析法による気相イオン反応機構解明と糖鎖構造解析に関する研究
Project/Area Number |
09J09395
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
塩入 優紀 Tokyo Institute of Technology, 大学院・生命理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | エネルギー分解質量分析 / 糖鎖構造解析 / 異性体判別 |
Research Abstract |
糖鎖の質量分析において、オリゴ糖以上では構成糖鎖を判別するためにナトリウムイオン付加体を用いるが、単糖におけるナトリウムイオン付加体はフラグメンテーションを起こさないために判別が不可能だとされてきた。しかし前述の理由からシークエンス分析における単糖の異性体判別が必要とされる。そこで質量分析中の分解エネルギーに着目するという独自の視点を生かし、当初の計画に沿って単糖をターゲットとしてその分解におけるアノマー異性体の判別に取り組んだ。アミノブチル基をアグリコンとすることで目的の単糖を質量分析計内で得ることができ、アノマー異性体それぞれにおける分解エネルギーが異なっていること、さらに衝突誘起解離の時間が短いほどその差異が大きくなることを見出した。これらの成果は第29回日本糖質学会年会にて報告し、それに関連する結果を日本農芸化学会2010などにて報告した。また関連して更に有用性を増したアグリコンとしてN-ヘキシルアミノブチル基を発見した論文において、同様の手法を用いて質量分析の実験を担当した論文をOrganic & Molecular Chemistryに報告した。 これらの手法を応用し、一般的な光学異性体の判別にも取り組んだ。光学異性体を有機合成により立体異性体へ変換し、その分解エネルギーの差異によって判別することとした。立体異性体への変換は古くから用いられている手法ではあるが、質量分析においてはフラグメンテーションパターンが極めて似たものになることが多く、鍵となるフラグメントを生成するため付加する化合物の選択が非常に煩雑となってしまう。また付加イオンの脱離がフラグメンテーションに優先する場合はそれ以上の解析が不可能となる。これらの問題はターゲットイオンの分解エネルギーに着目することで全て解決された。代表的な官能基を持つ化合物と光学中心を持たないグリシンを除いたアミノ酸19種について解析を行った結果が、現在論文投稿準備中となっている。
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