2010 Fiscal Year Annual Research Report
質量分析法による気相イオン反応機構解明と糖鎖構造解析に関する研究
Project/Area Number |
09J09395
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
塩入 優紀 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | エネルギー分解質量分析 / 糖鎖構造解析 / 異性体判別 / 絶対配置決定 |
Research Abstract |
生体内反応はキラリティを見分けて行われており、生体内反応の理解や新薬開発を考えたとき光学中心の正しい決定は非常に重要である。NMRにおけるモッシャー法のような方法も存在するが適用範囲が限られており、またサンプル量低減の観点からも改善が望まれている。そこで糖鎖に関する成果を応用することで質量分析法を用いた方法論を確立できると考え、エナンチオマーの判別および絶対配置の決定に取り組んだ。エナンチオマーを直接判別することはできないためキラル補助団を導入することでジアステレオマーへと導き、その差異をよって判別を試みることとした。低分子化合物においてフラグメント化が進行しないという問題があり従来法では解析不可能となっていたが、付加イオンの脱離過程に注目することで解析が可能でなった。アルコール、アミン、カルボン酸という代表的な官能基を持つ天然物の判別を試みたところ、全ての判別が可能であり、二つの光学中心がRSというペア(RS体)がSS体に比べて安定であることが分かった。これは立体的混み合いによる不安定化によって説明することができた。この実験事実に基づき立体決定の可能性を探るため、アミノ酸を用いた検討を行った。グリシンを除く19種のアミノ酸をジペプチドへ導き実験を行った結果、アスパラギンとグルタミンを除く17種でDL体がLL体に比べて安定であった。立体的混み合いの要因はアミノ酸の側鎖と考えられた。例外であった二つのアミノ酸は気相における立体構造の報告から側鎖とカルボキシル末端が環状構造を取っていると考えられ、混み合いの要因が側鎖ではなくカルボキシル基となることで逆転が起こったと説明できる。このように判別を達成したのみならず、立体的混み合いに関する考察から絶対配置の決定まで行える非常に優れた方法を確立することができた。この成果について、現在論文投稿準備中である。
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Research Products
(4 results)