2011 Fiscal Year Annual Research Report
機能性金属錯体を表面に集積させたグラファイトナノチューブの創成と応用
Project/Area Number |
09J09925
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
張 維 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | キラルメモリー / キラル転写 / ヘテロ接合 / ナノチューブ / 超分子ブロックコポリマー |
Research Abstract |
前年度までに、グラフェンの部分構造として知られるヘキサベンゾコロネン(HBC)を化学修飾した2種類の誘導体を段階的に自己集積化することで、軸方向にヘテロな接合部位をもつ一次元ナノチューブ、すなわち超分子ブロックポリマーを構築することに成功している。また、このHBCの側鎖として導入しているトリエチレングリコール鎖にキラル中心を組み込むことで、ナノチューブのらせんを一方向に誘導できることも見出している。本年度の研究では、らせんの巻方向が2段階目のHBCの集合化過程を通して継承されることを明らかにした。1段階目のマクロイニシエーターはキラル/アキラルな2種類のビピリジル基をそれぞれもつHBC混合物を集合化させ、金属イオンのビピリジル基への配位納合によってナノチューブ外壁を固定することで得た。2殴階目のHBCモノマーを添加後、SEM、TEMおよびTEM-EDX観察において2あるいは3セグメントからなる超分子ナノチューブの生成が確認された。ここで新たに生成したセグメントは、モノマー分子(HBC)に一切の不斉を持たないにもかかわらず、マクロイニシエーターと同じ巻方向のらせんを有していることが、円偏光二色性スペクトル測定によって示された。さらに、このセグメントのらせん方向は、モノマーが不斉を有しているか否かによらずマクロイニシエーターのらせん方向のみによって決定されることが明らかになった。さらに、このマクロイニシエーターは、ラセミ混合物を添加すると、一方のエナンチオマーを成長させる傾向をもつことを見出した。これは、一般的な共有結合性のポリマーにおける速度論的なエナンチオ選択性とは全く異なり、らせん状の超分子ポリマーにおいて熱力学支配による立体選択的な超分子重合を達成した初めての例である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
超分子ブロックポリマーのセグメント間におけるキラリティの継承・伝達の発見は、当初の計画では全く想定していなかったものであり、自然界におけるホモキラリティの解明に近づく大きな成果であると考えられるため。
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Strategy for Future Research Activity |
集合化のプロセスを今回までに達成した熱力学支配によるものだけでなく、速度論支配によって達成できる条件を探索する。また、超分子ブロックポリマーのセグメントサイズを縮小し、ナノメートルスケールで達成できる分子設計および集合化条件を探索する。
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Research Products
(3 results)