2010 Fiscal Year Annual Research Report
ソヴィエト後期の散文作品とコンセプチュアリズム芸術におけるテクストの相互的研究
Project/Area Number |
09J10088
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
神岡 理恵子 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | ロシア文化 / ロシア文学 / 現代美術 / ロシア現代美術 / コンセプチュアリズム / ソッツアート / ソヴィエト文化 / 表現の自由 |
Research Abstract |
研究2年目の本年度は国内外で資料収集と関連作品鑑賞を継続しつつ、とりわけ美術関連の文献の読解に重点を置き研究を進めた。本年度はロシアで「モスクワ・コンセプチュアリズム叢書」シリーズが続々と刊行され始め、1970年代以降の資料が入手可能となったためである。またロシア国内で開催される現代美術やコンセプチュアリズム芸術に関連する美術展等の調査も継続して実施し、本年度は12月から1月にかけてモスクワで資料収集と聞き取り調査を実施した。この調査の一部は、これまでの研究結果と合わせて論文「ロシアのアートシーン2005-2010」(『ユーラシア研究』44号、2011年)としてまとめた。従来のようにロシアの現代美術を一地域だけで取り上げるのではなく、ロシアの現代美術も今日のグローバルな経済活動の文脈を考慮に入れて把握することの必要性を指摘した点、若い世代の育成と活動を論じた点で新しい視点を示すことができた。またモスクワ滞在中にロシアにおけるコンセプチュアリズム第一世代に当たるアーティストのアレクサンドル・コソラポフ、イーゴリ・マカレーヴィチ&エレナ・エラーギナに聞き取り調査を実施した。前者には亡命前後の活動と表現の自由、著作権、宗教をめぐる問題意識についてインタビューし、現在その際の映像資料を整理・編集している。従来この作家の発言を参照できる資料がほとんどなかったため非常に意義のある調査を実施できた。また後者へのインタビューでは美術作品におけるテクストの役割、近年ロシアで再び浮上してきた表現の自由をめぐる諸問題とその歴史や裁判の経緯について、当事者から聞き取りができたことは大きな成果であった。ソ連時代に逆戻りしたかのような昨今の表現をめぐる諸問題については、論文化する準備を進めている。
|