2009 Fiscal Year Annual Research Report
社会的選好(social preference)の理論的基礎付けとその応用
Project/Area Number |
09J10146
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
早川 仁 The University of Tokyo, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 資源配分 |
Research Abstract |
社会的選好の資源配分に与える理論的影響を考察する基礎として、主に非社会的選好(合理的選好)にもとづく先行研究のサーベイ、そして独自的展開を行った。資源配分の制度として、とくに、現代先進国において広く定着している分散的貨幣経済制度を対象とした。 分散的貨幣経済制度において資源配分を分析するためには、価格の決定ならびに資源配分を媒介する貨幣流通の論理を把握する必要がある。しかし、既存の各種理論体系においては、相対価格の決定に関する理論的基礎は確立しているものの、貨幣の実体的な流通をも含む理論体系は十分には構築されてこなかった。先行研究において明示的に貨幣を取り込む試みとしては、・重複世代経済モデル、・リアルビジネスサイクルモデル、そして・サーチモデル、におけるものがある。ただし、前二者に関しては少数のタイプの経済主体間における貨幣流通の表現に関して可能性はあるものの、多様な経済主体間における貨幣流通の表現には大きな限界がある。サーチモデルに関しては、多様な経済主体間の貨幣流通の表現に適するが、現実にしばしば観察されるような安定的な貨幣流通体系の表現には不適である。 研究員は、ワルラス経済モデルを基礎とした分散貨幣経済制度に関する理論的枠組みの構築に取り組み、静学モデルに関して、"Analysis of Multi Currency System with Graphical Finance Theory(仮)"(2009 H.Hayakawa, working paper)にまとめた。当論文における理論的枠組みにおいては、貨幣流通体系がグラフ理論を用いて表現され、静的な定常状態における貨幣流通体系の分析を可能としている。本理論枠組みは、多数の主体間の貨幣流通、かつ定常状態における貨幣流通の分析に適しており、上述の既存研究の不備を補うものである。
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