2010 Fiscal Year Annual Research Report
βバレル構造を有する疎水性低分子輸送リポカリンタンパク質の構造と機能の相関
Project/Area Number |
09J10176
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
宮本 優也 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員DC1
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Keywords | リポカリンファミリー / リポカリン型プロスタグランジンD合成酵素 / ドラッグデリバリーシステム / 核磁気共鳴(NMR)法 |
Research Abstract |
本研究では,リポカリン型プロスタグランジンD合成酵素(L-PGDS)を用いた新規ドラッグデリバリーシステムの構築を目指している。本年度は,ヒト由来L-PGDSの立体構造の決定,および本蛋白質と難水溶性薬剤NBQXの複合体の構造解析を行った。^<13>C,^<15>Nで安定同位体標識したL-PGDSの多次元NMRスペクトルを解析し,170残基中169残基の主鎖及び側鎖シグナルを帰属した。また,プロトン間距離情報を用いて立体構造計算を行った結果,得られた10個の構造間の二次構造形成領域における主鎖原子と全ての重原子のrmsdは,それぞれ0.46Å,及び1.07Åであった。ヒト由来L-PGDSは8本のβストランド(A-H)からなるβバレル構造,1本の3_<10>ヘリックス(H1),及び2本のαヘリックス(H2,H3)を持つことが判明した。次に,1H-15N HSQC測定を用いてヒト由来L-PGDSに対するNBQXの滴定実験を行った。NBQX濃度の増加と伴に,いくつかのNMRシグナルのシフトに屈曲が観測されたので,滴定曲線をtwo site binding modelを用いて解析した。その結果、L-PGDSはNBQXを1つ目及び2つ目の結合部位に、それぞれ解離定数Kd=10.4μM及び1200μMで結合することが明らかとなった。また,1つ目及び2つ目の結合によって平均ケミカルシフト変化量が大きく変化した残基を立体構造上に示したところ,2つのNBQX結合部位はバレル内部に位置していることがわかった。以上の結果から,L-PGDSは複数の難水溶性薬剤をβバレル内部に結合できることが判明し,この特性は本蛋白質のDDSのキャリヤーとしての可能性を強く示鎖するものである。
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