2009 Fiscal Year Annual Research Report
抗体医薬を目指したγセクレターゼ活性阻害抗体の性状解析と応用に関する研究
Project/Area Number |
09J10745
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高鳥 翔 The University of Tokyo, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | アルツハイマー病 / γセクレターゼ / ニカストリン / 抗体医薬 / 単鎖抗体 / ターゲテドプロテオミクス |
Research Abstract |
γセクレターゼはアミロイド前駆体蛋白質を切断し、アルツハイマー病(AD)の発症と密接に関連したAβペプチドを産生することから、ADの重要な創薬標的である。申請者らはγセクレターゼ構成因子であるニカストリン(NCT)に対し、性質の異なる2種類のモノクローナル抗体(A5201A、A5226A)を作出した。詳細な性状解析の結果、A5201Aは小胞体に局在しγセクレターゼを構成していないNCTを特異的に認識すること、一方A5226Aは活性型γセクレターゼ複合体中のNCTを認識することが明らかになった。A5226Aはγセクレターゼ阻害能を有しており、抗体医薬シーズとして有望であると考えられる。 本年度において申請者は、これら抗体を基に単鎖抗体を作製した。A5201Aの単鎖抗体をintrabodyとして培養細胞に発現させたところγセクレターゼが不安定化し、Aβ産生量が減少した。この作用機序として、単鎖抗体がγセクレターゼ形成過程における、NCTの糖鎖修飾・構造変化を障害していることを明らかにした。一方A5226Aについては、γセクレターゼ阻害能を高めるため、力価向上を目的としたファージディスプレイスクリーニングの検討を進めている。 また申請者は、A5226Aを用いた免疫細胞化学の結果、γセクレターゼが細胞表面膜およびリソソームに局在していることを明らかにした。γセクレターゼの細胞内局在を抗体染色により明確に示した前例はない。さらに申請者はA5226Aをプローブとしてγセクレターゼ複合体を精製し、そこに含まれる新規の結合分子を同定した。培養細胞に対しこれら分子の過剰発現、ノックダウンを行った結果、Aβの産生に影響を与える複数の分子を見出した。今後、基質切断が生じる細胞内局在を詳細に解析するとともに、同定した結合分子についてその活性制御機構を明らかにすることにより、新たな創薬標的の開発につながることが期待される。
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