2009 Fiscal Year Annual Research Report
18、19世紀転換期のイギリス福音主義者の政治行動:対仏戦争とインド統治をめぐって
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09J10760
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
稲垣 春樹 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 福音主義 / ミッション / イギリス / インド / 対仏戦争 / 歴史学 / 西洋史 |
Research Abstract |
本研究は、18世紀末から19世紀はじめにかけての対仏戦争期において、福音主義者の国内政治との関わりが、奴隷貿易廃止運動や海外布教運動(ミッション運動)をはじめとする彼らの帝国問題への関わり方にどのような影響を与えていたのかを、福音主義者の人物史的研究に基づいて明らかにしようとするものである。本年度は、最新研究の把握に努めるとともに、基本史料を用いた予備的な考察を行った。前者としては、イギリス(東インド会社)によるインド支配、および福音主義に関する研究文献や基本史料を収集しながら読み進め、背景知識の獲得や新たな研究視角・研究手法の摂取に努めた。特に、統治者、博愛主義者、入植者という本国と植民地を結ぶ3つのネットワークの競合という視点でイギリス帝国を捉えなおす帝国ネットワーク論について集中的に読書した。後者としては、第一に、国内政治史における福音主義者の位置づけを再検討するために、修士論文の研究を進展させる形で、福音主義者の対仏戦争への反対運動に関する検討を継続して行った。これによって、国内の党派政治による影響から、福音主義者が反戦活動においては奴隷貿易廃止運動やミッション運動におけるような影響力を持ち得なかったことを明らかにした。この成果は9月に行われた第6回日英歴史家会議において報告し、さらなる研究のための助言を得た。また、前述の帝国ネットワーク研究のインド植民地史への適用可能性を検討するため、1806年のヴェロール反乱を契機とするミッション論争について検討した。この結果、帝国ネットワーク論の導入は本国-植民地の連関の解明という観点からのみならず、インドと入植植民地との比較という観点からも有効であるとの結論を得た。この成果は、3月の近代社会史研究会において報告し、さらなる研究のための助言を得た。また、2009年11月末から12月半ばにかけてイギリスにおいて関連史料の探索を行った。
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