Research Abstract |
1.ヒト15番染色体を保持したトランスクロモソミックマウス(TCマウス)の作製 H21年度に作出したヒト15番染色体断片を保持したTCマウスで行動テストバッテリー解析を行い,行動異常が認められるかを探索した。その結果,ヒト15番染色体断片を保持したTCマウスは,運動,聴覚,記憶,学習,驚愕反応,不安様行動,社会的行動などのテストでは,コントロール群と比較し大きな違いはなかったのに対し,ホームケージ活動量に顕著な増加を認め,さらに,新奇物体に対しての興味が高かった。今後,マウスを組織学的,分子生物学的に解析し,ヒト15q11-q13領域の重複によりどのような異常が生じるのかを明らかにする。 2.ヒト神経系細胞株へのヒト15番染色体移入 15q11-q13領域の遺伝子発現制御には,染色体ペアリングが重要な役割を果たしていることが明らかになったため,その分子機構の解明を目指し,まずペアリング領域を詳細に決定した。その結果,GABRB3遺伝子の3'領域が特異的にペアリングしていることを明らかにした。一方,他の染色体上のGABAレセプター遺伝子群領域では染色体ペアリングが認められず,15番染色体特異的であることが明らかとなった。さらに,高次クロマチン構造の形成に関わるMECP2,CTCFが15番染色体GABRB3領域のペアリングに関与していることをノックダウン実験により明らかにした。以上の実験より,染色体ペアリングが遺伝子の発現制御に関与していることを直接的に示すことが出来た(論文投稿中)。
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