2010 Fiscal Year Annual Research Report
オオヒメグモ胚の左右相称性確立における細胞間シグナル系のクロストーク
Project/Area Number |
09J40173
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Research Institution | JT Biohistory Research Hall |
Principal Investigator |
小田 康子 (秋山 康子) 株式会社生命誌研究館, 研究部門, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 細胞間シグナル / 体軸形成 / パターン形成 / RNAi / クモ / 細胞移動 |
Research Abstract |
本研究では、パターン形成の際に複数の細胞間シグナル系の情報がどのように統合されるのかを理解することを目指し、オオヒメグモ初期胚に左右相称のパターンが形成される過程をモデル系として解析を行っている。これまでの研究で、クモの初期胚ではHedgehog(Hh)シグナルを中心に、WntやDppシグナルなどが、前後軸・背腹軸形成、胚葉形成、体節形成に重要なはたらきをすることが分かってきた。22年度は、初期胚でのHhシグナルの役割と時空間変化、そして体軸形成時にHhシグナルが他のシグナルの伝達に及ぼす影響を明らかにすることを目指し、以下の4項目について研究を行った。 1.卵割中のクモ胚の1つの割球に二本鎖RNAを注入する方法(胚性RNAi法)を開発し、胚の局所的な領域での遺伝子の機能抑制を可能にした。Hh受容体をコードするptcの胚性RNAiでは、上皮細胞におけるptcの機能抑制がDppを発現する背側の運命を誘導する間充織細胞の移動を抑制することが明らかとなった。 2.HhシグナルやDppシグナルを可視化することを目指し抗体の作製を行い、Hhタンパク質の免疫染色像と思われるパターンを示す抗血清を得ることができた。さらに、Dppシグナルの伝達領域を可視化できるリン酸化MAD抗体の作製に成功した。 3.Hhシグナル系を構成する因子smo, ci, sufuの胚性RNAiを行った(sufuに関しては下記4を参照)。smoとciの胚性RNAi胚では、頭部領域の体節形成に大きな異常が出た。これにより'スプリット'と名付けた新規の体節形成にHhシグナルが関与することを示すことができた。 4.sufuのRNAiの解析から、脊椎動物と同様にオオヒメグモにおいてもsufuはHhシグナルを負に制御するはたらきをもつことが分かった。さらに背腹軸形成の解析では、sufuが腹側領域の限局化に関与することを示すデータを得た。腹側領域の限局化にはDppシグナルがはたらくことが必要であることを以前の研究で明らかになっている。ここにHhシグナルとDppシグナルの新たな接点があると考えられた。
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Research Products
(4 results)