2011 Fiscal Year Annual Research Report
レンチウイルスベクターを用いた脊髄小脳変性症14型の分子病態の解明
Project/Area Number |
09J55092
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
ANTON Nikolaevic 群馬大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 脊髄小脳変性症 / 小脳 / プルキンエ細胞 / 神経変性疾患 / PKC / 長期抑圧現象 |
Research Abstract |
小脳失調、構音障害、眼球運動障害を主徴とする脊髄小脳変性症14型(SCA14)は常染色体優性遺伝性疾患で、遺伝子変異によりタンパク質リン酸化酵素Cγ(プロテインキナーゼC;PKCγ)の一つのアミノ酸置換が原因である。PKCγが全部なくなってもわずかな運動失調を示すのみであることから、なぜPKCγの1つのアミノ酸が置き換わるだけで病気になるのかがわかっていなかった。PKCγは脳に特異的なPKCのタイプで、小脳プルキンエ細胞にとくに豊富に存在し、プルキンエ細胞の不要なシナプスを除去する役割をもつことが知られている。プルキンエ細胞にはPKCγ以外にPKCαも存在するが、PKCαは小脳が司る運動学習に不可欠であることが報告されている。 本研究では、レンチウイルスベクターを用いてマウスの小脳プルキンエ細胞に変異型PKCγを発現させて解析した。その結果、1ヶ月後にマウスは運動失調を示した。プルキンエ細胞を調べたところ、変異型PKCγは凝集体を作っていた。変異型PKCγとマウスがもともと持っている正常のPKCγ及びPKCαとの関係を調べたところ、変異型PKCγが正常のPKCγを巻き込んで凝集体を作っていることが明らかになった。他方、PKCαは変異型PKCγが作る凝集体に巻き込まれていなかった。そこでさらに研究を進めた。PKCαは通常、細胞質に存在し、刺激が入ると細胞膜に移動してタンパク質をリン酸化することが知られている。ところが、変異型PKCγが存在する場合、PKCαは細胞膜に移動してもすぐに細胞質に戻って来ることが明らかとなった。細胞質に十分な時間、留まることができないと、細胞膜に存在するタンパク質をリン酸化できず、PKCαの効果が失われることがわかった。本成果はJournal of Neuroscience(2011年10月5日電子版)に掲載された。
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Research Products
(2 results)