1999 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジア島嶼部における国際移動に関する文化人類学的研究
Project/Area Number |
10041010
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Section | 一般 |
Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
宮崎 恒二 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (40174156)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
富沢 寿勇 静岡県立大学, 国際関係学部, 教授 (70180164)
清水 展 九州大学, 大学院・比較社会文化研究科, 教授 (70126085)
山下 晋司 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (60117728)
上杉 富之 国立民族学博物館, 民族社会研究部, 助教授 (00250019)
伊藤 眞 東京都立大学, 人文学部, 助教授 (60183175)
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Keywords | 移民 / 出稼ぎ / マレーシア / サバ / インドネシア / フィリピン / 民族 / 労働 |
Research Abstract |
本年度(第二年次)は、分担に応じた民族集団毎の調査と、サバ州における開発政策及び移住政策についての調査を実施した。調査は面接・参与観察と文献資料の両面に渡って実施された。まず、全体の歴史的な文脈を明らかにすべく行われた英領北ボルネオ会社期の文献資料調査によって、移民・植民政策の過程一般、特にジャワ人の出稼ぎに関する資料を精査し、植民地期の開発政策と植民地間の人の移動についての詳細な資料を得た。また、現在のサバ州政府による開発政策についての聞き取り、観察調査が行われ、森林伐採から自然を資源とするエコ・ツーリズムへの方向の転換を看取するとともに、その可能性と限界に関する見通しを得た。他方、サバ州の住民を構成する個々の民族集団については、土着のカダザン系集団や外来のフィリピン系、ブギス系、また外来・在来双方を含むバジャウ系の集団に関する調査を実施し、政治と帰属意識との絡み合い、移住パタンの相違などに関する様々な事実が明らかになった。とりわけ、各々の歴史を構築する過程が観察され、集団としての意識とそれが発露する状況との関連についての知見を得た。 サバという地域は植民地化の過程においても、また国民国家形成の過程においても「周縁的」な状況に置かれていた。森林資源を利用しうる限りにおいて、政治の独自性を保つことが可能であり、その文脈では「民族」の持つ意味は現在ほど明確な境界を持つものではなかったと考えられる。しかし、資源の枯渇と共に、連邦の政治的な枠組みが導入され、政治的な混乱が拡大されると共に、「民族」の区分が明確化しつつある、と見ることができる。最終年度においては、移民と開発に関する北ボルネオ会社領時代と現在との連続と断絶を明らかにすると共に、現代の状況下における民族政策と各民族の対応について、詳細な調査を実施する予定である。
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