1999 Fiscal Year Annual Research Report
アフリカの乾燥サバンナ地域における環境の激変と人間対応
Project/Area Number |
10041027
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Section | 一般 |
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
堀 信行 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (40087143)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠田 雅人 東京都立大学, 理学研究科, 助教授 (30211957)
知念 民雄 流通経済大学, 経済学部, 助教授 (50236808)
鹿野 一厚 島根女子短期大学, 助教授 (10226110)
岩下 広和 東京都立大学, 理学研究科, 日本学術振興会特別研究員
高岡 貞夫 専修大学, 文学部, 講師 (90260786)
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Keywords | 気候激変 / 乾燥サバンナ / 干ばつ / 自然景観 / 牧畜活動 / ガリー侵食 / 土壌水分 / 砂漠化 |
Research Abstract |
本年度は3年計画の2年目であり、アフリカの乾燥サバンナ帯における環境激変のメカニズムを分析し、環境激変に対する人びとの対応を環境認識や生業様式の観点から明らかにすることを主要な目的とした。サハラ砂漠南縁地帯の乾燥地域のサヘル・ニジェールにおいて、土壌水分・植生(葉面積指数)の現場観測を5年間にわたって継続し、(1)それらの陸面状態と地上大気の間の季節・経年変化における相互関係を調べ、地上気象データを入力し土壌水分量を再現する統計的・物理的モデルを構築した。また(2)衛星NOAAの植生指標データによる植生と米国環境予測センター作成の客観解析データによる上層大気の間の広域的な相互作用について検討した(篠田、岩下)。 ニジェールにおいて、降雨にともなって発生するガリー侵食の様相と住民の認識を調査した。ガリー侵食は耕地の荒廃や水田の堆砂といった負の側面だけではなく、地下水位の上昇やガリー床における定常流の現出といった正の評価も住人によってなされ、流水を利用した菜園経営や家畜飼養、生活水の確保が成立している(知念)。ケニアの北部に居住する牧畜民のサンブルが、1991年以降に頻発する干ばつにいかに対応したのかを明らかにした。ウシやヤギ、 ヒツジといった家畜を個体識別したうえで、家畜の販売や贈与、信託といった取引や社会関係の分析を試み、干ばつの打撃を受けた家畜群をサンブルが再構築する動態を解明した(鹿野)。ケニア西部やインド洋沿岸地域の観光産業に携わる民族集団の相互関係や観光の盛衰に伴う変化の調査を行った(研究協力者:吉田未穂)。カメルーン北部のカプシキ地域では、死後は神体山に回帰し、死者の利用跡地も死を迎え、その後周辺原野と同じ状態になったとき再利用可能と考えている。土地を人間の生死に重ね、痩せ地の過剰利用回避システムをもっている。また雨林とサバンナの移行地域でサバンナ景観の形成に関する観察をした(堀、研究協力者:小橋寿美子)。
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Research Products
(12 results)
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[Publications] 堀 信行: "問題提起―「開発の三角形」の視座から―"地理科学. 54巻3号. 158-161 (1999)
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[Publications] 堀 信行: "アフリカの自然景観を考える:天と地のはざまのダイナミズム"地理月報. 444号. 1-4 (1998)
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[Publications] 堀 信行: "アフリカの大地―その特性と成り立ち"国際高等研究所「環境と食糧」研究会公開セミナー報告書. 74-81 (2000)
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[Publications] 鹿野 一厚: "人間と家畜との相互作用からみた日帰り放牧の成立機構 ―北ケニアの牧畜民サンブルにおけるヤギ放牧の事例から―"民族学研究. 64巻1号. 58-75 (1999)
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[Publications] 鹿野 一厚: "牧畜民はどのように旱魃に対応したか ―北ケニヤの牧畜民サンブルの1家族の事例から―"第35回日本アフリカ学会学術大会研究発表要旨. 37 (1998)
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[Publications] 鹿野 一厚: "中部ナイジェリアにおける牧畜フルベの放牧生態"第33回日本アフリカ学会学術大会研究発表要旨. 75 (1996)
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[Publications] 知念 民雄: "乾燥サバンナ地域におけるガリー侵食の正負の影響 ―ニジェール南西部の例"第36回日本アフリカ学会学術大会研究発表要旨集. 86 (1999)
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[Publications] Shinoda,M. and M.Gamo: "Interannual variations of boundary layer temperature over the African Sahel associated with vegetation and upper-troposphere. (in press)"J.Geophysical Research.
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[Publications] Shinoda,M.: "Desertification and drought as a possibe land-surface/atmosphere interaction."Global Environmental Research. (in press).
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[Publications] Shinoda,M., Y.Yamaguchi, and H.Iwashita: "A new index of the Sahelian soil moisture for climate change studies."Proceedings of the International Conference on Climate Change and Variability-Past, Present and Future. (in press).
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[Publications] 堀 信行: "環境の人類誌(岩波講座/文化人類学Vo.2.) (風土の三角形 ―生きられる「場所」の誕生)"岩波書店(福井勝義編). 28 (1997)
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[Publications] 鹿野 一厚: "西アフリカ・サバンナの生態環境の修復と農村の再生(中部ナイジェリアにおける牧畜フルベの牧畜活動に関する生態人類学的研究)"農林統計協会.(廣瀬昌平・若月利之 編著). 75 (1997)