東南アジアの湿地帯における資源と経済-開発と保全の生態史的研究

2000 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 10041051
• Research Institution: National Museum of Ethnology
• Principal Investigator: 秋道 智彌 国立民族学博物館, 民族社会研究部, 教授 (60113429)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 須田 一弘 北海学園大学, 人文学部, 教授 (00222068) ; 山尾 政博 広島大学, 生物生産学部, 教授 (70201829) ; 後藤 明 宮城学院女子大学, 学芸学部, 教授 (40205589) ; 田和 正孝 関西学院大学, 文学部, 教授 (30217210) ; 口蔵 幸雄 岐阜大学, 教養部, 教授 (10153298)
• Keywords: 湿地生態系 / マングローブ / 共同管理 / 近代化 / 政治生態学 / 生態史 / 小規模漁業・採集 / メコン委員会

Research Abstract

当初ベトナム、マレーシア、タイにおける調査を計画していたが、研究上の受け入れ機関であるベトナム民族博物館の都合で調査ビザの発給がなされず、調査地をラオス、カンボジア国に変更した。結果として、マレーシア、タイ、カンボジア、ラオスの東南アジア大陸部に焦点をあてた研究を、タイ、マレーシア(田和、後藤、口蔵、須田、山尾)と、ラオス、カンボジアのメコン河流域とトンレサップ湖(秋道、野中)において実施した。
湿地帯における開発と近代化による環境問題が今回の調査によって、複合的かつ重層的な問題を孕んでいることを明らかにすることが出来た。(1)共同管理システムの推進:マラッカ海峡域からアンダマン海沿岸にかけての湿地帯はエビ養殖池やハタ養殖・蓄養のために相当、環境が改変されており、資源枯渇をまねかないような共同管理システムが進められている。(2)先住民の生業変化と国家政策:マレー半島部におけるオラン・アスリの居住地では急速な近代化、商品経済の流入による生業と食生活、生活時間構造の変化が観察され、国家の近代化政策と先住民であるオランアスリの対応が重要な課題となっている。(3)メコン河開発と国際的な管理問題:ラオス領内のメコン河流域におけるダム建設、森林伐採があたえる影響について、MRC(メコン委員会)が調査研究をおこなっているが、社会経済的な影響に関する報告が2001年2月になされたばかりである。その点で、メコン河中流域のルアンパバン周辺の流域で乾季の始まり時期に行われる川ノリ(laver)採集は重要な季節的な生業活動であり、メコン河におけるる。(4)湿地の利権問題:トンレサップ湖では、乾季にエリ漁業の占有権と利権をめぐる政治的な課題があり、資源利用の政治生態学的な研究の必要性が重要であることを指摘したい。

Research Products

• [Publications] 須田一弘: "カンポンのフリーター"人文論集. 第18号(印刷中).
• [Publications] 秋道智彌: "島嶼世界と漁撈文化-入漁となわばりをめぐる試論-"島嶼研究. 創刊号. 1-14 (2000)
• [Publications] 秋道智彌: "オセアニアの地域史"地域の世界史4 生態の地域史. 268-309 (2000)
• [Publications] 秋道智彌: "海の道をたどる"村井吉敬 編 鶴見良行著作集8 海の道. 314-322 (2000)
• [Publications] 秋道智彌: "海と人類"海のアジア1 海のパラダイム. 3-30 (2000)
• [Publications] 野中健一: "ベトナム北部における干潟の水産小動物利用"動物考古学 2000. 14. 55-68 (2000)
• [Publications] 後藤明: "フィリピン・ビサヤ地方における手工芸生産-小規模経営組織に関する予備報告"宮城学院女子大学・人文社会科学研究所 人文社会科学論叢. 10. 29-54 (2001)
• [Publications] 田和正孝: "漁業というフィールドからの発信-技術の選択と女性労働"関西学院創立111周年文学部記念論文集. 45-63 (2000)
• [Publications] 田和正孝: "東南アジアにおける海洋資源の管理-南タイのフィールドから"民博通信. 91. 4-15 (2001)
• [Publications] 口蔵幸雄: "神話に生きる狩猟採集民の生命観-秩序を乱すものは処罰"東京ブックレット26『いのちを問う』. 26. 12-22 (1999)
• [Publications] 口蔵幸雄: "最適採食戦略-食物獲得の行動生態学-"国立民族学博物館研究報告. 24. 767-872 (2000)
• [Publications] 山尾政博: "新たな時代を迎えたアジアの農漁村協同組合運動"三国英実 編著「地域づくりと農協改革」. 194-212 (2000)
• [Publications] 山尾政博: "CO-MANAGEMENT FOR COASTAL FISHRIES RESOURCE MANAGEMENT IN SHOUTH ASIA : Co-management Approach"ICA Asian Research Conference (Geneva). (印刷中). (2001)
• [Publications] 山尾政博: "地域資源管理と住民参加"三国英実 編著「アジアの食糧市場・農産物市場と日本」. 257-274 (2000)
• [Publications] 山尾政博,P.Suanratanachai: "タイにおけるハタ養殖の経済構造"地域漁業研究. 42・2(印刷中). (2001)
• [Publications] 後藤明: "「物言う魚」たち-鰻・蛇の南島神話"小学館. 270 (1999)
• [Publications] 後藤明: "民族考古学"勉誠出版. 144 (2001)
• [Publications] 後藤明: "民族考古学"勉誠出版. 144 (2001)