モンゴル高原における遊牧の変遷に関する歴史民族学的研究

1999 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 10041052
• Research Category: Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
• Section: 一般
• Research Institution: National Museum of Ethnology
• Principal Investigator: 小長谷 有紀 国立民族学博物館, 民族文化研究部, 助教授 (30188750)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 松川 節 大谷大学, 短期大学部, 専任講師 (60321064) ; 萩原 守 神戸商船大学, 商船学部, 助教授 (20208424) ; 松原 正毅 国立民族学博物館, 地域研究企画交流センター, センター長教授 (30110084) ; 楊 海英 静岡大学, 人文学部, 助教授 (40278651)
• Keywords: 遊牧 / モンゴル / 内蒙古 / ブリヤート / ノモンハン

Research Abstract

現地においてモンゴル国側と中国側の研究者が集合し、三ヶ国の合同調査チームを編成して、以下のような日程で主たる調査を行った。
8月15日にハイラルヘ入り、エベンキ博物館を見学した。翌16〜18日は、ハイラルの地元知識人に案内を依頼して、ブリヤート、ホーチンバルガ、ウールト、エベンキ、ダグールの各部族・民族(なるべく物知りの老人)を訪問し、様々な聞き取り調査を実施した。
19〜21日は列車で大興安嶺のタイガ地帯(針葉樹林帯)を東方へ通り抜けて往復し、北魏王朝鮮卑族拓跋部の遺跡であるが仙洞の現状確認して、オロチョン族の老人から聞き取り調査を実施した。またここでは地元の行政関係者とも会って、狩猟生活の禁止措置や教育言語の選定、産児制限など公的な政策面からも現状の聞き取りをすることが出来た。
22〜23日は新バルガ左旗で遊牧の聞き取り調査とノモンハン戦争陳列館の見学をし、日本兵の遺骨や遺品が展示されているのを知った。またノモンハン事件の戦死者の遺体がまとめて焼かれたという場所や突厥時代のものかと思われる近くの石人も確認することができた。
古来フルンボイルは様々な遊牧・狩猟民族集団が並存する豊かな草原と森林であったが、近年その中心部に漢人の入植を伴う大型の火力発電所が建設され、さらに2〜3年前から草原(牧地)の戸別分割が始まっていて、垣根で囲い込まれた牧地まで時々確認できた。森林の狩猟生活は既に野生動物保護を目的に禁止されており、昔ながらの遊牧も既に不可能になりつつある現状がよく理解できた。
また、このほかに研究代表者および研究協力者は、古来より遊牧世界の中原であったモンゴル国中央部の草原において、近年の温暖化と市場経済化によって変容している遊牧の現状を把握した。

Research Products

• [Publications] 小長谷 有紀: "モンゴルにおける出産期のヒツジ・ヤギの母子関係への介入"民族学研究. 64・1. 76-95 (1999)
• [Publications] 松原 正毅: "海を渡った「大モンゴル展」 -遊牧からのメッセージに耳を-"季刊民族学. 89号. 105 (1999)
• [Publications] 萩原 守: "『ト・ワンの教え』について"国立民族学博物館研究報告別冊. 20号. 213-285 (1999)
• [Publications] 萩原 守: "中国内蒙古、赤峰市地区の民族・遺跡調査(1999年2・3月)"神戸商船大学紀要第一類文科論集. 48号. 19-41 (1999)
• [Publications] 松川 節: "大元ウルス命令文の書式"待兼山論叢(史学篇). 29号. 25-52 (1995)
• [Publications] 松川 節: "カラコルム出土1348年漢蒙碑文-嶺北省右丞郎中總官収糧記-"内陸アジア言語の研究. 12. 83--98, +1 pl. (1997)
• [Publications] 楊 海英: "オルドス<大元加封詔>碑について"『人文論集』静岡大学人文学部. 50・1. 47-53 (1999)
• [Publications] 楊 海英: "『チンギス・ハーンの二頭の騎馬について』―写本と口頭伝承の比較を中心に―"国立民族学博物館研究報告. 24・3. 485-632 (1999)
• [Publications] I..Lkhagvasuren: "海を渡った「大モンゴル展」―モンゴル人にとって必要なモンゴル展―"季刊民族学. 89号. 108 (1999)
• [Publications] 色音: "モンゴルにおける狩猟について"内蒙古社会科学. 4号. 58-62 (1999)
• [Publications] 色音: "シャーマニズムと北方民族の環境意識"黒龍江民族研究. 2号. 26-36 (1999)
• [Publications] 色音: "モンゴル族現代民俗学の形成と発展について"中国民俗学年刊. 創刊号. 120-128 (1999)
• [Publications] 色音: "モンゴルにおける狩猟の種類及びその変容"内蒙古民族師院学報. 1号. 6-12 (1999)
• [Publications] 島村 一平: "白いシャーマンと黒いシャーマン"季刊民族学. 93号. (2000)
• [Publications] 内田 敦之: "モンゴル国アルハンガイ県における現地調査報告"未来開拓『琵琶湖・バイカル湖プロジェクト中間報告書』. 10-13 (2000)
• [Publications] 松川 節: "モンゴル歴史紀行"河出書房新社. 111 (1998)
• [Publications] 松川 節: "森安孝夫・オチル編『モンゴル国現存遺蹟・碑文調査研究報告』(分担執筆)"中央ユーラシア学会. 292+82 (1999)