2000 Fiscal Year Annual Research Report
南アジア灌漑効率の比較研究-LLDCsへの農業技術移転の視点から-
Project/Area Number |
10041056
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
長南 史男 北海道大学, 大学院・農学研究科, 教授 (00113697)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 幸一 京都大学, 東南アジア研究センター, 助教授 (80272441)
黒河 功 北海道大学, 大学院・農学研究科, 教授 (90125310)
近藤 巧 北海道大学, 大学院・農業研究科, 助教授 (40178413)
佐々木 市夫 帯広畜産大学, 教授 (70125384)
茅野 甚治郎 宇都宮大学, 農学部, 教授 (40163729)
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Keywords | ネパール / バングラデシュ / 灌漑 / DTW / STW / 灌漑水市場 |
Research Abstract |
本研究の目的は南アジアの灌漑施設管理の効率を左右する要因について実証的に明らかにすることである。本年度は調査対象の農村にパキスタンを加えた。 ネパールのカトマンズ盆地にある、自然流下方式のサリナディ灌漑地区では、地理情報システム(GIS)を援用しながら農家の水利用効率の実態調査を実施した。単位面積あたりの粗収益を流域別に比較すると上中流部では下流部の2.5倍以上にもなっている。水利用に関するルールは未整備で、水資源を管理する主体も不在で、事実上、下流域の水利権は保証されていない。パレート効率の概念によって、上流農家が水を独占するために非効率性が発生していると結論できる。一方、ネパールのテライ地域にあるジャナカプールでは深管井戸(DTW)、浅管井戸(STW)灌漑が併存するが、DTWの揚水コスト(ディーゼル費用)が高すぎ、水路管理組織は存在せず、利用者が利用時にすべての配水コストを負担せねばならない。このためにSTWが普及したが、水利用は乾期の小麦、サトウキビへの灌漑にとどまっている。 バングラデシュやパキスタンでは水の取引市場が機能している。バングラデシュでは、揚水ポンプ輸入の規制緩和の結果、STWが急速に普及したが、売水価格は1990年代初期に比較して実質35%も低下し、多くのSTWで赤字経営となっている。これはDTW側のダンピングに一因もあり、水利料が減少した反面、土地分配率は上昇し、地主に有利な状況が生まれている。また、水利用をめぐる農民の間の蔓延的な非協調的行動が問題となっている。 パキスタンではインダス川流域の巨大な灌漑システムが50年の使用を経て、塩害、過剰たん水などの深刻な環境問題に直面している。この対策として、LBODプロジェクトでは排水施設への投資によって農業生産性を回復できることが示されたが、農民の非協調的な行動が塩害地域を放置する事例が観察された。
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Research Products
(2 results)