1998 Fiscal Year Annual Research Report
「南アジア地域協力機構(SAARC)」における市場経済と環境政策の総合的研究
Project/Area Number |
10041099
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Research Category |
Grant-in-Aid for international Scientific Research
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Section | Field Research |
Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
柏岡 富英 京都女子大学, 宗教文化研究所, 教授 (40142591)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東元 春夫 京都文化短期大学, 文化学部, 教授 (80218693)
川浦 昭彦 小樽商科大学, 商学部, 助教授 (10271610)
依田 博 神戸大学, 国際文化学部, 教授 (50093539)
藪野 祐三 九州大学, 法学部, 教授 (10047730)
SHRESTHA Man 甲南大学, 経営学部, 助教授 (90248097)
北川 勝彦 関西大学, 経済学部, 教授 (50132329)
飯田 経夫 中部大学, 大学院・経営情報学研究科, 教授 (70022449)
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Keywords | 南アジア地域協力機構 / 多民族社会 / 近代と伝統の相克 / 民主化 / 宗教対立 / 開発と環境保護 / 地域紛争と難民問題 |
Research Abstract |
本年度は、南アジア地域協力機構(SAARC)加盟諸国の政治と経済に関する基本的な研究を文献や資料に基づいて行うこと、SAARC本部で事務局長に対するヒアリングでさらに同機構の諸問題に関する認識を深めることを第一の目的とした。事務局長によれば、SAARC本部を加盟国の中の経済大国であるインドではなくネパールのカトマンドゥに置かざるを得なかったように、インドとパキスタンの対立の狭間でその調整に多くのエネルギーを費やしている。とりわけ、インドの経済力が加盟国の中では頭抜けているために、SAARCを「経済」協力機構とすると、同国のプレゼンスが強まりすぎて機構内を不安定にする悩みがある。これらの地域は、宗教的多元性、民族的多元性、そして貧困により政治的に不安定である。「予防外交」の一つの戦略である「文化交流」を同機構も基本戦略とするが、果たして同機構がこの地域の統合力を発揮できるかは今後の課題である。本年度の調査国、ネパールとブータンは好対照であった。ネパールは積極的な開発政策を進めようとし、ブータンは、GDPよりは“Gross National Happiness(GNH)"を社会の指標とすべきとするように経済よりは教育を中心とする社会開発に重きを置いている。ネパールは、民主化の平等性と国民の多数が信仰しているヒンズー教の不平等性との乖離が社会を不安定にさせている。メディアが政府の影響下にあるとの途上国に共通する傾向に両国もあるが、ネパールのメディアは、この不安定性にかかわる報道を社会に提供せざるをえないほど、社会全体に不安定の影が覆っている。さらに、ネパールの開発による環境の悪化は、早急な対応を迫られていることも見逃せない。ブータンは、開発援助による医療制度の整備が乳児死亡率の激減をもたらし、将来の不安定要因を暗示させている。
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