Research Abstract |
当初計画では,中国南西地域,特に四川省と貴州省を中心に鉱床の調査をする予定であった.しかし,昨年度四川省では,長江(揚子江)中流域が洪水に見舞われるような大雨が降ったため,調査範囲に,昨年度は山東半島,また本年度はこれと南西地域の関係を把握するために,黄河中流域の陜西省と河南省の省境付近を加えた.以上の調査と,採取した試料を分析した結果,次の事実が判明した.1)四川省の最南端に位置する攀枝華鉱床は,正マグマ成の鉄鉱床で,チタンやヴァナジウムなどを副成分元素として,産する.ただし,これらの元素は,磁鉄鉱中に固溶しているため,その回収にはコストが掛かる.2)四川省西部の康定付近には,小規模ながら多数の金鉱床が分布する.3)西安と洛陽の間,黄河の南岸に位置する小秦嶺地域には,多数の鉱脈型金鉱床が分布する.このうち,桐溝鉱床は破砕帯中に胚胎する含金石英脈である.4)山東半島の金鉱床は,珪化変質帯に胚胎する焦家型と,鉱脈に胚胎する玲瓏型に分けられる.玲瓏型に属する尹格庄鉱床は,鉱脈付近が珪化,離れるとカリ長石という変質分帯で特徴づけられる.5)変質作用で生成したカリ長石は,日本の第三紀浅成金鉱床と特徴づけるカリ長石(氷長石)と違い,Al/Si分配で高い秩序度を示す.平成7〜9年度の研究で採取した試料の分析も引き続き行ない,次のことが明らかとなった.6)雲南省中部に位置する哀牢山変成帯に分布するローディン岩から,極めチタン含有量の高いザクロ石が産出した.さらに,前回の研究から引き継いで,中国全域にわたる鉱床,特に金鉱床の分布特性を総計的に解析した.その結果,以下のことが判明した.7)金の初成鉱床は,金を主産物とする鉱床と,副産物とする鉱床にきれいに分けられ,金品位はそれぞれ対数正規分布を示す.8)金の砂鉱床は,高品位鉱床と低品位鉱床に分けられ,それぞれの金品位は対数正規分布を示す.9)品位-累積鉱量の関係から,中国の金鉱床は,高品位,中品位,低品位鉱床に分けられる.10)低品位鉱床の臨界品位も現在の採掘品位に近いので,中国では今後余り多くの金資源は期待できない.
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