1999 Fiscal Year Annual Research Report
ヒヒ類の社会構造の変異に関する生態学的・遺伝学的研究
Project/Area Number |
10041174
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
|
Section | 一般 |
Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
岩本 俊孝 宮崎大学, 教育文化学部, 教授 (40094073)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土肥 昭夫 九州大学, 理学部, 助手 (80091247)
森 明雄 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (50027504)
庄武 孝義 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (00003103)
|
Keywords | マントヒヒ / ゲラダヒヒ / 適応放散 / 系統進化 / 社会進化 / 集団遺伝 / 採食生態 / 子殺し行動 |
Research Abstract |
本年度はエチオピアとサウジアラビアでフィールド調査を行った。エチオピアでは岩本(研究代表者)がアルシ州に棲むゲラダヒヒの小個体群を対象に、20日間の生態学的調査を行った。この個体群については社会・生態的変化を約10年に渡り継続追跡しているが、調査の結果、(1)干ばつのためユニットの集合頻度が低くなっていること、(2)ユニット内の過剰なオスの割合が低くなっていること、(3)捕食者に対する警戒心が鈍くなっていること、などの結果を得た。また、視認可能な全ユニットの終日移動とアクティビティのデータを連続的に得たので、前年までに得た資料との比較分析を現在行っている。 サウジアラビアでは、山根(研究協力者)が庄武(研究分担者、しかし別予算で渡航)と共に捕獲・採血調査を行った。昨年23頭の捕獲を行ったダムサイトでは新たに46頭の個体を捕獲し採血後、35個体にタグをつけることが出来た。そこから約10km離れたゴミ場群で12個体捕獲し同様の処置を行った。これらの捕獲からマントヒヒ社会におけるユニット構成の変化速度、ユニット内外間の血縁関係などを知ることが出来る。さらに低地海岸沿いの地域個体群から8個体を捕獲し採血を行った。これから、アラビア半島及びアフリカ大陸個体群との類縁関係を知ることが出来る。現在、マイクロサテライトDNA及びmtDNA塩基配列を分析中である。 岩本・土肥(研究分担者)は現在対応者のブーク氏と共に2週間にわたりサウジアラビアのダムサイト群で群れ構成、アクティビティ追跡、採食生態に関わる調査を行った。他個体群および他種のヒヒのデータとの比較により、サウジアラビアのヒヒの社会を成り立たせている生態的要因を特定する。森(研究分担者)は2ヶ月間にわたりゴミ場群の社会学的調査を行い、子殺しのメカニズムに関わる子守(infant care)・統制(herding)行動の観察データを得た。これらは統制に基づく父系社会の維持機構の解明に役立つ。
|
-
[Publications] Mori,A.,Iwamoto,T.,Mori,U.and Bekele A.: "Sociological and demographic characteristics a recently found Arsi gelada population in Ethiopia"Primates. 40(2). 365-381 (1999)