新奇な有機金属クラスターの創製とその反応ダイナミクス

1998 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 10044093
• Research Category: Grant-in-Aid for international Scientific Research
• Section: Joint Research .
• Research Institution: Keio University
• Principal Investigator: 茅 幸二 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (10004425)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): YANG DongーS. ケンタッキー大学(米國), 化学科, 助教授 ; SIMARD Bemoi カナダ國立研究所, 主任研究員 ; RAYNER David カナダ國立研究所, 主任研究員 ; HACKETT Pete カナダ國立研究所, 副理事長 ; 中嶋 敦 慶應義塾大学, 理工学部, 助教授 (30217715)
• Keywords: 有機金属クラスター / 生成反応機構 / 高分解能電子分光 / 理論計算 / 遷移金属元素 / 希土類元素

Research Abstract

本国際学術研究は、この数年来新奇な構造をもつ有機金属クラスターの研究を行っている慶應大学グループと、ハケット博士を中心に、金属錯休の活発な物理化学的研究で世界的に著名なカナダ国立研究所(NRC)グループが協同研究を行うことで、物理化学の分野からの貢献が比較的小さな「金属錯体」研究に、より大きな寄与することを意図し、開始された。慶應NRCいずれのグループも、レーザー蒸発、分子線法という共通の技術があるが、慶應グループは、2成分クラスター研究に熟達し、NRCサイドは単一成分クラスターの分光、反応性の研究を活発に行っている。そこで、本研究では、慶應グループの発見したさまざまな有機金属サンドイッチクラスターをカナダでも生成させ、そのZEKE(高分解能電子分光)そして反応速度の決定を試みること、カナダサイドは来年度の協同研究のために、慶應での質量分析、安定なクラスターの同定などを行うこととした。また、それと同時に、遷移金属および希土類元素を含む有機金属クラスターの電子状態と構造を、第一原理的に理論計算することを、カナダ側で検討する計画を持った。
平成10年5月に代表者(茅)と中嶋はカナダを訪問し、オタワでの実験、理論、モントリオールでの理論の協同研究について打ち合わせを行った。その後、慶應大学から栗河(大学院博士課程3年)がカナダにおいて、慶應グループの発見したV-benzeneサンドイッチを生成させ、その反応性を測定したが、殆どのクラスターが化学的に不活性であることを見出し、我々の従来の定性的結論をより確定的なものとした。カナダサイドから、10年11月にレイナー博士が来日し、我々の装置の改良特に特にパルスバルブの製作などに多くの示唆を与えた。平成11年1月からカナダに慶應の2人の学生が行き、高分解能電子分光によって、金属錯休の構造の知見を得ることができた。また、カナダから分光グループのリーダーであるシマード博士が来日し、遷移金属原子とエチレン、アセチレンとの2成分クラスターの生成と質量分布について実験をおこなったが、この結果を踏まえて、カナダで分光学的手法で構造解析を行う予定である。いずれの面でも、2年次にクラスター構造とクラスター生成機構に関する重要な結果が得られるものと期待している。

Research Products

• [Publications] 岸 令子: "Geometric and Electronic Structures of Fluorine Bound Silicon Clusters" J.Chem.Phys.108. 8039-8058 (1998)
• [Publications] 栗河 剛: "Formation of Cobalt-C_<60> Clusters:Tricapped Co(C_<60>)_3 Unit" J.Phys.Chem.102. 1743-1747 (1998)
• [Publications] 中嶋 敦: "Photoelectron Spectroscopy of Binary Semiconductor Clusters:A New Methodology for Electronic States" RIKEN Review. 17. 35-36 (1998)
• [Publications] 栗河 剛: "Multiple-Decker Sandwich Complexes of Lanthanide-1,3,5,7-Cyclooctatetraene Ln_n(C_8H_8)_m](Ln=Ce,Nd,Eu,Ho,and Yb);Localized lonic Bonding Structure" J.Am.Chem.Soc.120・45. 11766-11772 (1998)
• [Publications] 長尾 諭: "Formation and Structures of Transition Metal-C_<60> Clusters" J.Phys.Chem.A. 102・24. 4495-4500 (1998)
• [Publications] 根岸 雄一: "The Infrared HOMO-LUMO Gap of Germanium Clusters" Chem.Phys.Lett.294. 370-376 (1998)
• [Publications] G.H.Lee: "Photoelectron Spectra of Small Nanophase W Metal Cluster Anions" Chem.Phys.Lett.299. 309-314 (1998)
• [Publications] 栗河 剛: "Electronic Properties of Organometallic Metal-Benzene Complexes[M_n(benzene)_m(M=Sc-Cu)]" Organometallics. (in press). (1999)
• [Publications] 中嶋 敦: "Photoelectron Spectroscopy of 7-Azaindole-Water Clusters Anions" Eur.J.Phys.D.(in press). (1999)
• [Publications] 栗河 剛: "Multiple-Decker Sandwich Complexes of Lanthanide-1,3,5,7-Cyclooctatetraene[Ln_n(C_8H_8)_m](Lu=Nd,Er,Eu,and Ho" Eur.J.Phys.D. (in press). (1999)
• [Publications] 根岸 雄一: "Photoelectron Spectroscopy of Tin and Lead Cluster Anions:Application of Halogen Doping Method" J.Electron Spectrosc.and Related Phenomena. (in press). (1999)
• [Publications] 中嶋 敦: "A Novel Network Structure of Organometallic Clusters in Gas Phase" J.Phy.Chem.,Feature Articles(Invited). (in press). (1999)