1999 Fiscal Year Annual Research Report
多嚢胞性卵巣症候群(PCO)の内分泌学的及び遺伝学的解析
Project/Area Number |
10044200
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
渡辺 元 東京農工大学, 農学部, 助教授 (90158626)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新井 浩司 東京農工大学, 農学部, 助手 (70293016)
田谷 一善 東京農工大学, 農学部, 教授 (60092491)
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Keywords | モルモット / 多嚢胞性卵巣 / インヒビン / エストラジオール / 主席卵胞 |
Research Abstract |
1)モルモットにみられた自然発症多嚢胞卵巣の解析 3-6ケ月例の性状発情周期を回帰するハートレー系モルモットを用いた。排卵日は腔の開口とその後の腟スメア像の変化に基づいて推定した。推定排卵日を基準に1日各1個の卵巣を組織学的に検索した。その結果、3種類の卵巣嚢腫を認めた。最も多い嚢腫は漿液嚢腫で発情周期を通して観察された(63,5%)。この嚢腫は卵巣網由来であり、ヒトの良性卵巣上皮腫に類似した組織像(扁平上皮細胞で、多くは頭頂部に繊毛を持つ)を示した。一方、22.4%に認められた卵胞嚢腫は、顆粒層が1,2層しか存在せず、常に漿液嚢腫と共存していた。また、1例には卵巣傍体嚢腫が認められた。インヒビンα、βA、βBサブユニットの免疫組織化学染色を行ったところ、いずれの卵巣嚢腫も陰性であった。 これらの嚢腫は、ヒト及びウシの卵巣嚢腫のモデルとして、発症機構の解析に有用と考えられた。 2)インヒビンの能動免疫による排卵数の増加 発情周期を同期化したモルモットを用いてインヒビンの能動免疫の効果を検討した。抗原にはウシ・インヒビンα鎖ワクチン液(50mg/ml,Biotech Australia)及びその溶媒を用いた。発情周期を同期化した雌モルモットの黄体期前半に抗原2用量(0.5、1ml)あるいは溶媒(各群6頭)を4週間間隔で3回皮下投与した。実験期間中は週に1回採血し、抗体価とプロジェステロン(p)濃度を測定した。3回目の抗原投与後に見られた最初の発情期から8日後(黄体期)に、心臓から採血し、下垂体前葉を採取してRlA法にてFSH濃度を測定した。卵巣を採取し、組織切片を作製して卵胞数と黄体数を調査した。 その結果、実験期間に見られた4回の発情周期の日数に変化は認められなかった。また、抗原投与3週目以降、全例に抗体価の上昇が認められた。血中P濃度は抗原投与2回目以降に有意に増加した。卵巣を組織学的に検索した結果、対照群では排卵数(黄体数)が4.2±0.4であったのに対し、抗原投与群では6.2±0.9(0.5ml)、9.8±1.0(1ml)と有意に増加した。また、正常卵胞数は各群間に有意差は認められなかったが直径300-400mmの退行卵胞数が抗原投与群で有意に増加した。 以上の結果から、雌モルモットの発情周期中においてインヒビンがFSH分泌調節に重要な役割を演じていることが示唆された。また、モルモットにおいても、インヒビンの能動免疫によって排卵数を増加しうることが判明した。
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