1998 Fiscal Year Annual Research Report
低エネルギー放射線を用いたDNA主鎖切断誘発機構の研究
Project/Area Number |
10044217
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Research Category |
Grant-in-Aid for international Scientific Research
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Section | Joint Research . |
Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
檜枝 光太郎 立教大学, 理学部, 教授 (20062656)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MICHAEL Barr Cancer Research Trust. Gray Laboratory, Joint Exec
小林 克己 立教大学, 物質構造研究所・放射光, 助教授 (20114077)
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Keywords | DNA / 主鎖切断 / 電子 / 放射線 / 単色真空紫外線 |
Research Abstract |
あらゆる放射線生物作用の初期過程は、低エネルギー電子線の作用に還元できる。しかし、低エネルギー電子線(10eVから数100cV)の照射実験は技術的に極度に困難であり、DNA分子に照射できる施設は現在英国グレイ研究所にしかない。本年度はグレイ研究所に、檜枝、小林、宇佐美が滞在してプラスミドDNAの主鎖切断の電子エネルギー依存性研究の基礎を固め、以後の本格的実験の準備を整えた。また、B.D.Michael博士を12月に招聘して、来年度の研究実施計画を詳細に検討すると共に、日本放射線影響学会年会シンポジウムに参加し講演を行い、本研究班の成果を日本の放射線生物学者に広く知らせた。具体的な実験的な成果を以下にまとめる。(1)檜枝(7-9月)および小林(7-8月)がグレイ研究所に滞在し、プラスミドDNAに対する低エネルギー電子線の照射実験を行い、適切な試料作成法を決定した。さらに、線量測定法を検討し、本格実験の基礎を固めた。滞在中に、B.D.Michael博士のグループが実施したダラスベリー研究所における単色真空紫外線の照射実験にも参加し、日本のフォトンファクトリーにおける類似実験との相互比較の基礎的検討を行った。(2)研究協力者の宇佐美がグレイ研究所に滞在し(2-3月)、15から3000eVの低エネルギー電子線をプラスミドDNAに照射して、1本鎖および2本鎖切断を定量的に測定した。得られた予備的な結果をまとめると、15eV電子線によって2本鎖切断が、線量に対してほぼ直線的に誘発された。このことは2本鎖切断誘発の閾値が15eV以下であることを示す。低エネルギー電子線は2本鎖切断を1本鎖切断の数十分の1の比率で誘発し、この比がγ線による比と極端に違わないことが示された。来年度はされに精密な実験を行い、低エネルギー電子線によるDNA主鎖切断誘発機構について明らかにする。
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