1998 Fiscal Year Annual Research Report
有機導体の柔らかい格子における電子状態:物性制御から設計へ
Project/Area Number |
10102004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鹿児島 誠一 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (30114432)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 隆祐 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (60302824)
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Keywords | 有機導体 / 電子状態 / 一軸性加圧 / 低温X線回折 / 熱電能 / 超伝導 / 電荷密度波 / スピン密度波 |
Research Abstract |
今年度は本研究の初年度である。実験装置の開発および現有装置による有機導体の電子状態の解明を並行して行った。まず一軸性加圧をおこなう実験装置の設計・試作,および極低温X線回折装置の設計・製作を行った。一軸性加圧装置として2つの方式を考案した。(1)低温で固化した油を圧力媒体とし,低温でピストンに外力を加えることによって,固化油の中に置かれた有機導体試料に一軸性変形を起こさせる方式。(2)油圧セル内部に試料を埋め込んだエポキシ樹脂をおき,常温において一軸加圧・クランプしてから冷却する方式。磁場効果を調べるためには(2)の方法が不可欠である。いずれにおいても,ひずみゲージを試料とする試験において,意図どおりの一軸性変形が起こっていることを確かめた。いくつかの既知の有機導体試料を用い,超伝導転移温度が圧力とともに上昇することや,静水圧では実現できなかった超伝導が誘起されることを発見した。極低温X線装置については,基本設計を行い,製造過程において予備実験を重ねつつ最終製品を設置した。 有機導体の電子状態の解明においては,1次元性をもつ(TMTSF)_2AsF_6のスピン密度波状態とされている電子状態の真の姿を解明するため,熱電能測定および低温X線回折をおこなった。スピン密度波状態に多相があり,それに構造変化がともなっている可能性を発見した。特にX線回折においては,フランスのグループが提唱している電荷密度波の共存と考えられる実験結果を確認するとともに,その電荷密度波が3K程度以下の低温では消失することを新たに発見した。これは実験温度を極低温にまで拡張したことによる成果である。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] N.Hanasaki: "Contribution of small closed orbits to magnetoresistance in quasi-two-dimensional conductors" Phys.Rev.B. 57・3. 1336-1339 (1998)
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[Publications] V.A.Bondarenko: "A thermopower study of the SDW state of quasi one-dimensional conductor (TMTSF)_2AsF_6" Solid State Commnu.107・3. 477-481 (1998)
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[Publications] S.Kagoshima: "Electronic States of Low-Dimensional Organic Conductors(DMeDCNQI)_2Cu and α-(BEDT-TTF)_2KHg(SCN)_4 under pressure" Rev.High Pressure Sci.Technol.7. 437-442 (1998)
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[Publications] N.Hanasaki: "The Pressure Approach to the Origin of the Anomalous Sate in the Quasi-Two-Dimensional Organic Conductor α-(BEDT-TTF)_2KHg(SCN)_4" Rev.High Pressure Sci.Technol.7. 520-522 (1998)