1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10115220
|
Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
浅川 滋男 奈良国立文化財研究所, 平城宮跡発掘調査部, 遺構調査室長 (90183730)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大貫 静夫 東京大学, 大学院・人文社会研究科, 助教授 (70169184)
西山 和宏 奈良国立文化財研究所, 平城宮跡発掘調査部, 研究員 (10290933)
|
Keywords | 竪穴住居 / 定住性 / 寒冷地適応 / 古アジア語族 / ツングース / 焼失住居址 / 土葦き屋根 / 天窓 |
Research Abstract |
日本列島を含む環日本海地域に竪穴住居は分布しているが、その分布は極寒の地であるシベリアにまで及んでいない。この事実からみても、竪穴住居の成立背景は寒冷地に対する適応としてだけでは説明できない。東シベリア後期旧石器時代に一時的に見られた例をのぞくと、その後の竪穴住居の系譜に連なるものの出現と展開は、日本列島を含めた東アジアの氷河期から後氷期にかけて起こった一連の事象の一つとしてとらえうる。それらを結びつけるのは、定着的な食料採集民社会の出現である。その定着性が高まるにつれ、住まいの構造は鍋底状の浅い穴居から主柱をもつ本格的な竪穴住居と発展していく。 その積の竪穴住居の構造や空間分節は不明な点が多く、従来は民族誌資料などを援用した類推しか手だてがなかった。しかし、近年では、縄文〜弥生時代の焼失竪穴住居が日本各地で続々と発見されており、これまでの常識を覆すような「土葺き」の屋根構造や天窓の存在が明らかになってきている。本研究においては、岩手県一戸町・御所野遺跡で出土した約4000年前の焼失住居などを復原し、その構造がいわゆる「古アジア語族」やトンプソン・インディアンなどの特有な饅頭形・天窓出入りのタイプではなく、測道出入りによる土被覆の住まいであることを論証した。この種の竪穴住居はカマクラの外観に似ており、樺太アイヌのトイ・チセや黒龍江ホジェン(ナーナイ)族の竪穴住居に近いタイプである。
|
Research Products
(8 results)
-
[Publications] 浅川滋男・西山和宏・高田和徳: "縄文時代の土屋根住居の復原(一)-岩手県一戸町御所野遺跡の消失竪穴住居-" 月刊文化財. 6月号. 55-59 (1998)
-
[Publications] 浅川滋男・西山和宏・高田和徳: "縄文時代の土屋根住居の復原(二)-岩手県一戸町御所野遺跡の消失竪穴住居-" 月刊文化財. 7月号. 36-40 (1998)
-
[Publications] 浅川滋男: "御所野遺跡-縄文時代中期の環状集落-" 建築雑誌. 9月号. 22-23 (1998)
-
[Publications] 浅川滋男・西山和宏: "縄文集落遺跡の復原-岩手県一戸町・御所野遺跡〓の焼失住居から-" 第2回アジアの建築交流国際シンポジウム論文集. 333-336 (1998)
-
[Publications] 浅川滋男: "太陽にむかう船-池上曽根遺跡・大型掘立柱建物の復原-" 奈良国立文化財研究所年報. 1998-I. 18-19 (1998)
-
[Publications] 浅川滋男: "池上曽根遺跡からの反論-復原建物の実証性をめぐって-" 建築雑誌. 11月号. 67-70 (1998)
-
[Publications] 浅川滋男(編): "先史日本の住居とその周辺" 同成社, 544 (1998)
-
[Publications] 浅川滋男(共著): "古代史の論点2 -男と女-" 小学館 印刷中, (1999)