1998 Fiscal Year Annual Research Report
ブラックホール近傍における非熱的プラズマの時間発展と放射
Project/Area Number |
10117215
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
楠瀬 正昭 関西学院大学, 理学部, 助教授 (40211883)
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Keywords | 放射過程 / 粒子加速 / プラズマ / ブラックホール / 活動銀河中心核 / ブレーザー / ジェット / コンプトン散乱 |
Research Abstract |
一様なプラズマ中の電子と光子のエネルギー・スペクトルは,エネルギー空間におけるそれぞれの連続の式によって記述される.そして連続の式に電子や光子の逃避を表す項を加えることによって,電子や光子の空間的な輸送を近似することができる.この研究では,この式を数値的に解くことによって,電子と光子のエネルギー・スペクトルの時間発展を同時に求める計算コードの開発を行い,相対論的な電子が重要な役割を果たす場合,すなわちブラックホール近傍のプラズマでの現象に応用した.そして特にブレーザーと呼ばれる活動銀河中心核からのガンマ線放射の時間発展を計算した.電子のスペクトル計算のために,2つの場合を考慮した.一つは既に加速されてpower lawに従う電子をinjectionした場合,もう一つは電子の加速領域と放射領域が併存し,加速と放射による時間変化を共に求める場合である.これらの計算によって,以下の結果を得た. 1. 電子のエネルギー・スペクトルには放射冷却のためにbreakが生じるが,このbreakの位置が時間とともに変化する様子,またそれによって生じる放射スペクトルの時間変化が計算できるようになった.これによって,これまでに得られた観測結果と比較することでブレーザーの加速・放射領域の物理状態の解明が期待される. 2. Mkn421のX線観測によって放射のfluxとspectral indexの間に時間変動によるヒステリシスのあることが知られている(右回りの変化).これに対して本研究の計算では,右回りか左回りかは,X線領域がシンクロトロン放射のどの部分に位置するか(スペクトル・ピークの左か右か)によることがわかった.従って,注入される電子の全エネルギーの大きさによって右回りか左回りかが決まるという結果を得た.
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