1998 Fiscal Year Annual Research Report
パラ水素固体中のトンネル現象の量子統計力学的ダイナミクスの研究
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10120223
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
衣川 健一 奈良女子大学, 理学部, 助教授 (50254446)
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Keywords | 経路積分 / セントロイドMD / 分子動力学 / ボーズ系 / フェルミ系 / 量子ダイナミクス |
Research Abstract |
径路積分セントロイド分子動力学(CMD)法をボーズ・フェルミ系に拡張する一つの定式化を行った。従来のCMD法は、量子揺らぎの効果をセントロイド座標に関する有効セントロイドポテンシャルにマップし、そのポテンシャル面上でのセントロイドの半古典的分子動力学シミュレーションを行うというもであった。しかし、この従来のCMD法では、セントロイドは半古典変数でボルツマン統計に従う。低温の量子系では、景子揺らぎの効果に加えて、ボーズ・アインシュタイン統計、フェルミ・ディラク統計といった統計的な効果が重要であり、この効果をCMDにどのようにインストールするかという点は従来の懸案であった。われわれは、そのような統計的な効果を導入した半古典的な分子動力学法、すなわち、ボーズ・フェルミ系に拡張されたCMD法の定式化を完成させた(これを、ボーズCMD、フェルミCMD法と呼ぶ)。さらに、この定式化の過程で、径路積分モンテカルロ法の代替となる、スタティックなシミュレーション法としての径路積分分子動力学(PIMD)法をボーズ・フェルミ系に適用できるような拡張を開発した(ボーズPIMD、フェルミPIMD)。このボース・フェルミPIMD法は、ボーズ・フェルミ系の正準分配関数から積分変数としての置換演算子を見かけ上消去した、「擬ボルツマン型」の正準分配関数に基づき、分子動力学による配置のサンプリングを可能にしたもので、ボーズ・フェルミCMD計算の際しても有効セントロイドポテンシャル(力)の評価のために利用される。特に、フェルミPIMD法では、すべての置換を、「置換ポテンシャル」を通じて同時に計算するため、フェルミ系のモンテカルロ計算固有の「負符号問題」が生じない。 以上の新しい方法は、多自由度トンネル現象の解明に不可欠のものである。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Kenichi Kinugawa: "Path integral ceutroid molecular dynamics study of the dynamic stracture factors of liguid para-hydrogen" Chemical Physics Letters. 292(4-6). 454-460 (1998)
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[Publications] K.Kinugawa P.B.Moore,M.L.Klein: "Centroid path integral molecular-dynamics studies of a para-hydrojen slab crntaining a lithium impurity" Journal of Chemical Physics. 109(2). 610-617 (1998)
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[Publications] S.Miura,S.Okazaki K.Kinugawa: "A path integral centroid molecular dynamics stady of nonsuperfleeid liquid heliu-4" Journal of Chemical Physics. 110(9). 4523-4532 (1999)