1998 Fiscal Year Annual Research Report
ビニルホスホナートのナザロフ反応の開発とその縮環テルペン類合成への応用
Project/Area Number |
10125231
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
南 享 九州工業大学, 工学部, 教授 (10029134)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡内 辰夫 九州工業大学, 工学部, 助手 (60274552)
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Keywords | ビニルホスホナート / ナザロフ環化反応 / 位置選択性 / 分子軌道計算 / ホスホノジビニルケトン |
Research Abstract |
本年度は、リン酸官能基の電子求引性を利用して二重結合の位置選択性の制御を行うことにより、ビニルホスホナートを用いたNazarov環化反応の一般化を目指した。また二重結合の位置選択性発現機構を解明するために、置換基及び酸の効果を分子軌道計算結果と実験結果との比較によって検討を行った。 種々の非環状ジビニルケトンに対し、酸触媒存在下、反応溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用いることによりNazarov環化反応を行った。その結果、基質によってはリン酸官能基の電子求引性からは予想できないリン側に二重結合が形成した環化生成物が得られた。 そこでホスホノジビニルケトンでのNazarov環化反応の二重結合の位置選択性発現機構を解明するために、置換基及び酸の効果を分子軌道計算結果と実験結果との比較によって検討した。中間体であるシクロペンテニルカチオンの分子軌道計算(PM3法)の結果、配位したプロトンに対しアンチペリプラナー位の炭素のLUMOの係数が大きくなることが分かった。即ち、配位した酸のアンチペリプラナー位にオレフィンが生成すると予想される。この計算結果と実験結果を比較すると、Lewis酸を用いた場合にはリン酸基との立体反発によってexo-中間体の方が有利となるためリン側に二重結合の生じた生成物が選択的に得られたものと考えられる。一方、プロトン酸の場合には立体反発が軽減されるためendo-中間体の寄与も大きくなり選択性の低下がみられたものと思われる。これら分子軌道計算結果と実験結果との比較により、二重結合の位置選択性に対する置換基及び酸の効果が説明できる。現在、置換基の位置が変化した様々な非環状ジビニルケトンを用いて、二重結合の位置選択性発現機構に及ぼす置換基及び酸の効果の一般則の解明を目指している。
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