1998 Fiscal Year Annual Research Report
放射光利用光電子顕微鏡による微小領域表面磁性の研究
Project/Area Number |
10130225
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木下 豊彦 東京大学, 物性研究所, 助教授 (60202040)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 真一 神戸大学, 大学院・自然科学研究科, 助教授 (10252800)
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Keywords | 光電子顕微鏡 / 微小領域 / 表面 / 磁性 |
Research Abstract |
今年度は11月1日付けで分子科学研究所より東京大学物性研究所に移動したが、本公募研究は本年度で終了するため、分子研で建設した光電子顕微分光装置で引き続いて研究を継続した。今年度はよく制御された表面磁性薄膜を、超高真空中で準備するための装置の整備を行った。表面の磁性を光電子分光を使って調べる前に、磁気光学効果を用いて評価する装置の他、放射光が使えない時でも光電子分光を行ってサンプルの評価を行えうよう、紫外光源を導入した。また、表面における磁性の膜圧依存性を効率良く調べるためには、光電子顕微鏡によって、楔形に膜圧の変化しているサンプルのごく一部の状態を調べつつ、サンプルを動かせば良いと考え、その装置も製作した。分子科学研究所UVSOR施設における円偏光アンジュレーターがユーザータイムに供与される時期がおくれているため、当初予定していた円偏光を用いた微小領域磁性の研究はまだ行えていないが、直線偏光や通常のX線管を用いた光電子分光実験を行い、Co薄膜上のNi薄膜の磁気状態、Co薄膜の磁気状態の酸化過程による変化など、興味深い結果を得ている。Co上のNiについては、Cu上のNiと異なり、広範な膜圧領域で表面に平行な強磁性磁化を示すことが見い出された。また、Co薄膜の酸化の研究では、これまでの報告より多い酸素暴露量でも、Coの強磁性的挙動が観測された。これらの結果については第12回真空紫外線物理国際会議、物理学会の他、本特定領域研究研究会でも報告を行っている。また、極薄い膜圧のCoや、Niでは、価電子帯がより局在化しているために、膜厚が大きい時とはその光電子スペクトルにあらわれる多体効果の様子が異なって観測されることを見い出した。すなわち、Niで観測される有名な6eV付近のsatellite構造が、膜厚が小さい時にはその位置や、光エネルギー依存性の振る舞いが、厚い時のそれと異なること、また、Coでは通常観測されないこのsatelite構造が、膜厚のうすい場合には観測されること、等の新しい現象を見い出した。本公募研究はこれで一応終了するが、今後は、分子研UVSORだけでなく高エネルギー加速器研究機構内の放射光実験施設(PF)における円偏光放射光利用も視野に入れつつ研究をすすめていく予定である。
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