1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10132243
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
伊藤 敏幸 岡山大学, 教育学部, 助教授 (50193503)
|
Keywords | 不斉合成 / トリブチルスタニルシクロプロパン / キラルジフルオロシクロプロパンモノアセタート / ホモカップリング反応 / トリブチルスタニルジフルオロシクロプロパン |
Research Abstract |
シクロプロパンを分子内に有する生理活性物質が多く知られているが,シクロプロパン化合物は3炭素ユニットとして有機合成ブロックとしても有用であり,適切に官能基化されたシクロプロパン化合物の不斉合成法の開発が求められている。従来良い方法がなかった脂肪族置換基を有する様々なキラルシク口プロパンの合成ユニットとしてキラルなメタル化シクロプロパンの合成法を開発し,シクロプロパンのキラル炭素上での金属-炭素結合の切断と炭素-炭素結合形成について検討を行うことにした。初年度の研究で,主としてリパーゼによる反応でキラルシクロプロピルスズを合成することに成功し,本年度はこれらのシクロプロパン化合物の官能基変換を試みた。Pd触媒によるカップリング反応で芳香族やビニル基を導入できること,スズ基をメタル交換してリチオ化したのちジメチルフォルムアミドと反応させてホルミル化がキラリティーを損なうことにできることを実証できた。さらに,銅(I)塩+Pd触媒によるホモカップリング反応で光学純度を損なうことなくキラルビスシクロプロパンを合成することができた。この方法論で脂肪族官能基を有する様々なシクロプロパン化合物を合成できることになる。さらに,シクロプロパン基にフッ素を導入したジフルオロシクロプロパンは新しい機能性分子としての可能性を秘めている。すなわち,ジフルオロメチレン基は生体内ではエーテル酸素等価体として機能するとされているために,ジフルオロシクロプロパンは生体内ではエポキシド等価体として機能すると考えられる。しかし,キラルなジフルオロシクロプロパンの合成は従来なされていなかった。今回,リパーゼを活用してジフルオロメチルシクロプロパンの最初の不斉合成を達成し,酵素反応と有機金属反応のCombined methodによりキラルなシクロプロパン誘導体の新しい不斉合成法を開発することができた。特にジフルオロシクロプロパンは最初の不斉合成例である。これらの素材を生かして新しい機能性分子創製のための基礎事項を確立することができた。
|
-
[Publications] Itoh,T.;Emoto,S.;Kondo,M.: "Synthesis of Enantiomerically Pure Trubutylstannyl cyclopropanes through Lipase-catalyzed Reaction" Tetrahedron. 54. 5225-5232 (1998)
-
[Publications] Itoh,T.;Mitsukura,K.;Furutani,M.: "Efficient Synthesis of Enantiopure 1,2-Bis (hydroxymethyl) 3,3-difluorocyclopropane Derivatives through Lipase-Catalyzed Reaction" Chem.Lett.No.8. 903-904 (1998)