1998 Fiscal Year Annual Research Report
ねじれによるビニル水素の活性化:sp^2炭素での共有結合の形成
Project/Area Number |
10132264
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
勝村 成雄 関西学院大学, 理学部, 教授 (70047364)
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Keywords | ねじれた1,3-ジエン / σ-π軌道相互作用 / ビニル水素の活性化 / 新たなビニル位での共有結合生成 / スチレン型ねじれた1,3-ジエン / ねじれた1,3-ジエンの一重項酸素酸化反応 / ジアステレオ選択的アレンの生成 |
Research Abstract |
私達はこれまでに“ねじれた1,3-ジエン化合物"の合成を、相当するビニルトリフラートとアセチレンのPd(0)触媒を用いたカップリング、続くアセチレンの部分水素添加により実現し、その合成法を確立してきた。本年度はこの合成法を用い、2級アルコールを持つねじれた鎖状1,3-ジエン、および、ねじれたスチレンタイプ化合物の合成を実現した。 次いで前者について一重項酸素酸化を検討し、不斉炭素についた2級水酸基の一重項酸素に対する立体選択性に及ぼす効果を検討した。その結果、これまで報告されている2級水酸基と一重項酸素との相互作用に基づく選択性と、逆の立体選択性が認められた。用いた基質の立体配座解析の結果、この基質では分子内水素結合のため立体配座が規制されていることが明らかとなり、ジアステレオ選択的なアレンの生成という極めて希な現象を解析することができた。 一方スチレン型のねじれた1,3-ジエンについては、この分子に強塩基を作用させた後DOで処理することによって、ベンジル位のメチル水素に優先してビニル水素が引き抜かれることが判明した。そこで、ペンジルアニオンに優先してビニルアニオンを発生させた後、これを求電子剤としてベンズアルデヒドやフルフラール、さらにトリメチルシリルクロリドやヨー化メトキシメチルでの捕捉を試みたところ、各々相当する付加体やアルキル化体が得られた。特にアルデヒドとの反応では45-55%の収率で付加したアルコールが得られ、これによってペンジルアニオンに優先したビニルアニオンの生成を確証することができた。このような現象は初めて観察されたものであり、ねじれたl,3-ジエンにおけるビニル水素はσ-π軌道相互作用によって著しく活性化されることを実証したものである。またそれと共に、ビニル位での新たな共有結合の生成法を提供するものであり意義深い。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Mori,H.;Katsumura,S.et al.: "Photosensitized Oxygenation of Twisted 1,3-Dienes:Abnormally Higher Reactivity of Vinyl Hydrogen Rather Than Allyl Hydrogen Toward Singlet Oxygen" The Journal of Organic Chemistry. 63. 8704-8718 (1998)