1998 Fiscal Year Annual Research Report
細胞間接着における糖質-糖質間相互作用の役割と分子機構の解明
Project/Area Number |
10134216
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
北島 健 名古屋大学, 農学部, 助教授 (80192558)
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Keywords | 糖鎖-糖鎖間相互作用 / ガングリオシド / シアル酸 / オリゴシアル酸 / 卵精子相互作用 / 受精 / 細胞間接着 / 界面活性剤不溶性膜ドメイン |
Research Abstract |
糖鎖-糖鎖間相互作用は新しい細胞間接着分子機構として注目されているが、それが関与する生物学的現象は数例知られるのみである。本研究はこのような相互作用が受精における精子と卵結合においても働いていることの証明を目的としている。本年度は精子-卵接着における糖鎖-糖鎖間相互作用の例証および役割の解明に取り組み以下の成果を得た。 1 ウニ精子の糖脂質(主要な成分としてジシアル酸残基をもつガングリオシド)に対して、卵の精子受容体が結合することが明らかになった。この精子の主要糖脂質が細胞膜上の集合構造に関連すると考えられる低密度で界面活性剤不溶性の糖脂質に富む膜画分(LD-DIM)が、精子においても存在が示された。この精子LD-DIMは、脂質組成の特徴から既知の他の細胞系で報告のあるcaveolaeに似た膜構造であることが推定された。さらに、このLD-DIMは精子受容体との結合性もあり、精子と卵の接着において機能的に重要なドメインであることも示唆された。また、LD-DIMには免疫化学的にGタンパク質の一種が同定されており、外界のシグナル(この場合は接着)を精子内部に伝達する入り口として機能するドメインであることも示唆された。 2. ニジマス以外の受精における糖鎖間相互作用存在の普遍性を探る目的で、メダカ、アユの精子表面主要糖脂質を同定するために、現在メダカを飼育して精巣の収集、また養魚場にてアユの精巣の採取を既に行った。メダカ、アユなどの精子主要糖脂質の構造を決定しているところである。さらに、それらの糖脂質と相互作用する卵側の分子を同定して、新しい糖鎖間相互作用の例を検索する予定である。
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[Publications] Chihiro Sato: "Development of a highly sensitive chemical method for detecting α2→8-linked oligo/polysialic acid residues in glycoproteins blotted on the membrane." Analytical Biochemistry. 261. 191-197 (1998)
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[Publications] Satoko Fuchizawa: "Induction of KDNase Sm, a deaminoneuraminic acid (KDN) residue-specific sialidase from Sphingobacterium multivorum, using synthetic KDN-glycosides." Biochem. Biophys. Res.Commun. 248. 505-510 (1998)
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[Publications] 北島 健: "新しいシアル酸KDNの糖鎖科学の現状と展望" バイオサイエンスとインダストリー. 56・10. 11-16 (1998)
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[Publications] Chihiro Sato: "Fluorescent-assisted detection of oligosialyl units in glycoconjugates." Analytical Biochemistry. 266. 102-109 (1999)