1998 Fiscal Year Annual Research Report
パルプ漂白の工程水中に蓄積する物質の性状の解析とその除去法の開発
Project/Area Number |
10141207
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松本 雄二 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (30183619)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯塚 堯介 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (30012074)
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Keywords | 活性酸素 / 化学パルプ / 漂白 / 排水 / リグニン |
Research Abstract |
化学パルプの漂白工程において、現在でも行われているカウンターカレント式によるもの以上の“水の使い回し"を可能にするためには、“使い回し"する上で最低限必要とされる“水質"を規定する必要がある。酸素系漂白(分子状酸素、オゾン、過酸化水素等を用いる漂白法)についてそれを考えるならば、(1)漂白試薬を無駄に消費しない、(2)多糖類を酸化分解する活性種を生成しない、ということになろう。これらは、一般的な水質の指標(COD、BOD、色度等)によっては評価することができないので、定量的に評価する方法を確立する必要がある。今年度はこのことを課題として研究を行った。 (1)については簡単に定量できるので問題はない。(2)の活性種の生成の有無に影響する因子としては、排液中の有機物の構造と量、pH、遷移金属の種類と量、異なった遷移金属間の量比等がある事が最近の筆者らの研究で明らかになったきた。これらの因子を一つ一つ定量して総合評価するのは不可能である。そこで、一度の反応で、総合的な評価を可能にするモデル反応系の開発に取り組んだ。このモデル反応系は、基質としてmethyl-β-D-glucopyranoside(MGP)を用いる。MGPは、パルプを構成する多糖類中の活性な官能基であるヒドロキシメチル(一級水酸基)、ヒドロキシメチレン(二級水酸基)、グリコシド結合等をすべて含んでおり、これの分解の程度によって、活性種の生成の程度を総合評価する事ができる。pH、遷移金属量、遷移金属間の量比等を様々に変えてこれらの因子がmethyl-β-D-glucopyranosideの分解の程度として合理的に表現されるかどうかを、酸素・アルカリ漂白、過酸化水素漂白の反応条件で検討したところ、本モデル系は,排液中の有機物と遷移金属に由来する活性酸素種が多糖類に与える影響をうまくあらわす事ができた。
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[Publications] T.Yokoyama 他: "The Role of Peroxice Species in Carbohydrate Degradation during Oxygen Bleaching Part III" J.Pulp & Paper Science. 25(2)(印刷中). (1999)
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[Publications] K.Koda 他: "Evaluation of the Extent of Oxidation Reaction during Chlorine Bleaching of Pulp" J.Wood Science. 45(2)(印刷中). (1999)
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[Publications] 朴承榮 他: "イネワラのアルカリ系蒸解における脱シリカ反応に影響する因子" 紙パ技協誌. 53(2). 214-221 (1999)
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[Publications] T.Yokoyama 他: "Reaction Selectivity of Active Oxygen Species produced by Oxygen-alkali oxidation of a phenolic compound" J.Wood Science. 44(5). 421-422 (1998)